骸さんにストーカーされる


綱吉に相談するとおもっくそかわいそうなものを見る目をされてお前のそのアイスハートのほうがかわいそうなんだよおんどりゃーって言いそうになるのを堪えて、綱吉をにらむだけにした、だって恐いんだもん。


話はさっきのこと。


長かった一週間も終わり明日からのスペシャル3連休をうきうき★どきどきハートでスキップしちゃうくらいルンルン気分で校門をくぐった、そのとき、クフフ、変な声。


え、なにこのパイナップル(仮名)。


顔を上げたその先には腕を広げたどこだっけ、ああ隣町の黒曜中だったような気がする、中に迷彩のTシャツを着たパイナップル(頭部)みたいな男の人が立っていた。


パイナップルだけど綺麗なひとだなあ、と思って通り過ぎようとしたら「ちょっと!せっかくの感動の再会なのにぎゅうはなしですかぎゅうは!」


やべえ、このひといろんな意味でこわいな、今日なんのドラマやったっけ、金曜日だから、山田さんの日だなよっしゃあああ「なまえ!」あああえええ?


今、私の名前呼ばれた気がする、気のせいじゃない、あのパイナップルさんがにこにこしながら私のほうを見てる、いやどっちかっていうとにやにや的な笑いでなにあのひとこえー!てかなんで名前知ってんの?


「なまえ!やっと逢えましたね!」
「わ、私‥?」
「君以外になまえがいるわけないでしょう。何言ってるんですか」


パイナップルが近づいてきて、ご丁寧に両手広げて、そういえばさっきぎゅうとか言ってたな、まじきもい変態か「!」あっというまに迷彩服が目の前に、私死ぬ。


「ちょ、なにするんですか変態!」


どん、と勢いをつけて自分の両手を最大限突っぱねて相手との距離をとろうとする、あっさり離れてくれたもののその子犬みたいな目えやめろ!急いで目をそらして、


「その、私、あなたのこと、知らないので!失礼します!」


こういうときは逃げる、悲鳴をあげる、子供の安全守る家に駆け込む、小学生のとき習った不審者を見たときの対処法どおり、私は逃げた。
みょうじ選手、走る、走る、走る!ぶっちぎりの一位です!
体育だっていつもびりの私だけど今回はめっちゃがんばった、だって見知らぬ男の人にぎゅうってされてなんか絶対勘違いしてるよなああの人、でもなまえって読んでたしなあ、あったかかったなあ、腕の中ああああ何考えてるんだ自分しね!


そして駆け込んだのは綱吉の家、今あったことを言って冒頭の綱吉はアイスハートという会話に戻るわけだ、まじ冷たくない?氷点下以下だな綱吉!


「なんか言ったなまえ?」


ごめんなさいなにも言ってないのでにこやかに黒いオーラだすのやめてくださいすんませんっした!


「なまえなんかにはぐするとかどんだけだよそいつ、変態じゃんでも変態パイナップル、心当たりがあるけど自分でなんとかしてね」
「え!そんな!助けてよ綱吉!大切な幼馴染の大ピンチだよ!」


私が綱吉のまわりでわーわー言うと静かにしろよじゃなきゃ殺す的なオーラが漂い始めたので私はおとなしくひざを抱える。心当たりあるならなんとかしろよ。
あいすはーと綱吉め。


「もういいもーん。ひとりでなんとかするもんね!べー、だ」


いい逃げが勝ち!立ち上がってドアに後退しつつあっかんべーをして急いで階段を降りて奈々ママにさよならして自分の家に駆け出す。
徒歩10分のところを5分でつくとは、金メダル狙えるな北京。


さすがにさっきのひと、こんなところにはいな「お帰りなさいなまえ、遅かったじゃないですか」


おぎゃああああああでたああああああああ!


「な、な、」


なんであんたがここにいるのと聞こうとしたのに口が回らない。


「口が回らないほど嬉しいなんて!なまえ!」


またがばっと腕を広げたので私はさっきの経験からいそいで身を翻してはぐを回避した、やべえ危なかった。
素敵に空振りした彼の腕は空気を掴み、脇に避けた私を見て


「もう!なまえってば照れないでください」


照れてねええええええ!
何ほんと頭おかしい人なのかもこの人?むしろ決定事項?


「なんなんですかあなた!」
「僕ですか?言わせないでください、なまえの夫になる男です、きゃ、照れる」


殺意が芽生えたってこういうこと言うんでしょうか、誰が誰の夫だこのやろー!


「…なまえ、本当に僕のこと覚えていないんですか?」


途端、寂しそうな、悲しそうな顔をして私を見つめる。
あ、あの、だんだん顔ちか、近づいてるんですけど、ほら、ご近所さんに顔向けできなくなっちゃうじゃないですか、ぱちりと視線が重なる、綺麗な瞳。赤と青、吸い込まれそうな、


「僕がこんなにも思っているのに‥」
「‥」


そんな顔をされても、本当に知らないのだ、こんな綺麗な瞳のひとにあったならいくらなんでも記憶してるような気がするのだけれど。
さすがに申し訳なくなってくる、


「あの、」
「先週コンビニで君を見つけたときから僕は君にフォーリンラブだったのに!」
「‥‥、は?」
「僕がんばったんですよ!名前もわからなかったから調べるの苦労しました、ともだちのともだちのともだちのツテをたどってようやくなまえのことをしったんですよ!」
「‥‥」
「おや、どうしましたなまえ?嬉しさに言葉もでな、」


決まりましたみょうじ選手の弾丸パンチ!
綺麗な顔にぐーぱんちかましてしまった、だけど後悔はない。
なにこの変態ストーカー!やっぱあぶねえ!
一瞬でも反省した自分が馬鹿だったそしてかっこいいとか思ったのも馬鹿だった若気の至りだった!
最後に「しねへんたい!」といって家の玄関を開けがちゃん!と大きな音を立てて閉めてがちゃん!と鍵をかける。


なんなんだあのひと!
こんなオープンなストーカー聞いたことない!
しかもあんなの顔見知りとか綱吉はどうなってんだ綱吉は。
どうしようもないこのどきどき感をとりあえず綱吉にぶつけて、いやほんとこれ恋とかのどきどきじゃないからね!ね!
ね!自分!


ちしま