ヴァリアーと人形




おねがいです、できたらあいしてください




ボスにおなかのあたりをけられてぐは、とか、うがあ、とか女の子らしくない声にならない声が口から飛び出して、うああわたしかわいくないなあ、って思った。
ボスはわたしをける。
みんなの、しせんが突き刺さる。
ああもっとみて、けって!、わたしまぞだめすぶただと思う。
王子がししっと笑いながらボスー、死んじゃうよーとおもしろそうな声で止めに入ってくれて、でもボスはうるせえといってわたしに最後のいっぱつを決めて、わおくりーんひっと。



くるしい、くるしい、だれか、



はだかのおなかにはたくさんのあざがあって、おなかだけじゃなくてからだじゅうに傷がある、むねにも、あしにも、うでにも、おしりにも、痛い、けどこれはしるしだから、うれしくなる。
しるし、わたしをひつようとしてくれる、あかし。



おいで、なまえ。



呼ばれたら、返事をして、ボスやみんながいるおへやにいくの。
みんなの前で服をぬいで、ゆっくり、ゆっくり、上から下まで、ぜんぶ。
わたしのからだをみてください、もっとおっぱいおっきくなれたらなあ。



ひとりずつ、みんなひとりずつじゃないとだめだよ。
ときどきふたりとかさんにんとかわりこむこともあるけど、ひとりずつ。
じゅんばん。



ときどきね、みんながキスしてくれるときがあるの。
もう、死んでいいなあって思う。
口にも、からだにもいっこずつ、首もおなかもあそこもふとももも。



でも王子とボスはときどきかむからびっくりする、あとでかがみをみたらアトになってた。

みんな、優しい。
みんな、怖い。



なまえ、もういいよ。戻れ。



どうして!さびしい、もっと、かなしい、あいして、ほしい、
すこし涙がじわあと染みてきて、それに気づいたボスがもういちどわたしをけりとばした。
わたし、とんだ!空とんだ!



「にんぎょうの分際でなにふざけたことしてんだ」



ごめんなさいぼす、ごめんなさい。
愛してなんていわないから。
ごめんなさい、
ただひとつ、きえないくらい深い、傷をつけてください、ごめんなさい、



くちのなか、ちょっと鉄の味。
ひろがる、あか。



にんぎょうでも、ひつようとしてくれるひとがいるのなら、しあわせなのです、もっと痕をつけてください、できたら、あいしてください。






ちしま