夢を見た。
「おいで、」
お願い、連れてって。わたしをおいていかないで。
誰か、真っ黒な誰かがわたしを、わたしに手をのばして、おいでって呼んでくれているのにわたしはなかなかたどりつけなくて、その人は遠のく一方で、悲しくて、苦しくて、寂しくて、


「うん、ごめんね、明日でも、いいかなあ。ケーキ焼いて待ってるね。それじゃ、また明日」



がちゃり。
しずかでまっくらな部屋に電話を切る音が大きく響いた。