東堂尽八とキス

東堂とのキスはとてもやらしい、ような気がする。
年齢=彼氏いない歴の私がなぜファンクラブがあるような彼と付き合うようになったのかはひとまずおいておいて、付き合い始めて3ヶ月、ついに初キス、みたいなセオリーの通り、順調に恋人としての時間を重ねてはいるけれど、喪女歴なめんなよ!って感じなわけで、やらしいも何も比較対象がいないから、なんとも言えないわけで。


でも、最初に、「キスしていいか」って聞かれてからの初めてのキスは、ほんとうに、ちょっとだけ、唇と唇が触れるだけの、そういうキスだったけれど、だんだん、時間が長くなっているような気がして。映画とかドラマとかで見るキスっていうか、ていうか私へたじゃないかな?って心配になるけどこういうのって誰に相談すればいいんだ?話がずれた。


久しぶりのオフ、東堂が私の家に遊びにきたいと言うので、超超超片付けた。部屋に来るのは初めてじゃないけど、「あんたが部屋を綺麗にするのはじんぱちくんが来る前の日だけね。いつも綺麗にしてたら慌てなくて済むのに」ってお母さんに笑われて、気が利くんだか利かないんだか、「ちょっとお母さん買い物行ってくるわ」と買い物かご片手にスーパーへ向かうお母さんの背中を見送った後、入れ違いで東堂が現れた。


「おでかけか、さっきすれ違ったぞ」
「そうなの、こないだうるさかったの反省したみたい」


ベッドの上に腰掛けた東堂が手招きするのでとなりに座る。ベッドが軋む。東堂が話してくれる、自転車競技部の話はとても面白い。特に、会った事はないけれど、巻ちゃんさんの話をよくしてくれる。お母さんが用意してくれたジュースを飲みつつ、なんとなく、そわそわしてしまう私。今日は、しないのかな。なんて。いんらんってやつかな、嫌がられるかな。


一瞬だけ、沈黙。東堂が水滴のついたグラスをことりとテーブルに置いた。なんとなく、つられて、私もコップを置く。


「  」


名前を呼ばれて、さっきとは違う、おとこのひとの顔をした東堂の左手が私の腰を抱き寄せた。目と目が一瞬あって、恥ずかしくて目を伏せる。唇が一瞬だけ触れあう。すぐに離れて、二度目のキス。東堂の右腕が、私の頭にかかえこみ、私の右耳を触る。え、なにこれなにこれ。耳朶をかすめ、くぼみをなぞるように東堂の指の感触。あ、やばい。東堂の舌が入ってくる。受け入れる。ちゅ、ぴちゃ、となんかこう書くのも恥ずかしいような水音が、塞がれそうな耳のあたりでも聞こえるような気がして、羞恥で意識が飛んでしまいそうだった・いやいっそ飛んで行ってしまいたい。東堂の右手は私の右耳を、左手は腰を触れるか触れないかくらいのぎりぎりのラインでさするものだから、もう、もう、


「むりぃ、」
「、嫌か」


東堂はとてもずるい男だった。嫌なわけ、ないのに。「やじゃ、ない、」からもっとしていいよ。


2015/06/07 しおちゃんへ!
東堂ってなんかキスうまそうかなって思って。