クレジット 幸村
ともだちでも、すきなひとでも、家族でも、たのしかったりあんしんしたり、すきだと思うことはたくさんあるのに、ふっと、目がさめるように、いっしゅんだけきらいになることがよくある。またすぐにすきになるんだけど、よくないなあと思いつつ、わたしは、いつも同じことを繰り返しているのだ。
幸村くんだって、わたしは幸村くんのことがだいすきでしかたがないのに、だいすきなはずなのに、やっぱり、ふっと、目がさめるように、きらいになってしまう瞬間が、ある。勝ちにばっかり、こだわって、テニスのたのしさを忘れちゃうなんて、ばかじゃないの、って。きらい。ほんとうはわたしのことなんか、すきじゃないんじゃないの、って。幸村くんは、「すきだよ」って言ってくれるし、ぎゅーってだきしめてくれるし、すごくすごくやさしいけれど、ほかのこにも、やさしいとこ、すきだけど、きらいになったり、わたしはいそがしい。
「おいで」
ほら今日だって、さっきまでひとりでもんもんとしていたのに、幸村くんに呼ばれた瞬間に、花が咲いたみたいにうれしくなって、しっぽでもふってるみたいに幸村くんの胸に飛び込んだ。ぎゅーってだきしめてくれる幸村くんをぎゅーってだきしめ返して、あー、やっぱりすきかもだなんて思っちゃったり、なんて現金なおんななんだろうか。
クレジット
▼20110204 ちしま
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