たいおん 竹谷

わたしの上にいる竹谷が余裕なさそうに眉をよせた。このかお、すごくすき。さいごのさいごに、おくまで突かれてわたしはちいさな悲鳴をあげる。ふたりとも息は荒くて、ちょっとだけ汗をかいた竹谷がむぎゅうと覆いかぶさるようにわたしを抱きしめて、すき、と小さな声で呟いた。竹谷の髪の毛がほっぺたにあたってくすぐったい。ちょっとだけ身じろぎして竹谷の耳のそばでわたしもすき、と言ってやった。こそばいのか竹谷はごろん、とよこに移動。

「おいでー」

竹谷はへらっと笑って左腕をぽんぽんと叩いて見せた。お、おじゃまします、と腕枕をしてもらう。竹谷の腕、たくましくてだいすき。左腕はわたしの髪の毛をやんわりと撫でた。ついでに竹谷の右腕はわたしの腰にまわり、足は絡めとられる。くっつきたがり。
ふあーん、と、あたたかな、なんだろう、においというか、フェロモン?的な何かが鼻をくすぐった。香水とかそんなんじゃなくて、竹谷のにおい。あ、おひさまのにおいだきっと。だからあんしんするのかな。胸元にふんふんと顔をすりつけて、首をふってみせたらねこみたいだと笑われた。
と、竹谷はお前冷え性なのな、と言った。ぴたりとくっつけられた脚は、竹谷の脚はあついくらいに熱をもっているのにくらべて、体温なんてないみたいにひんやりとしたわたしの脚。

「うあ、ごめん」

慌てて竹谷から脚を離そうとすると「いーよ」竹谷がもう一度脚を絡めなおした。竹谷の両足に挟まれるように、わたしの脚。じんわりじんわりと、竹谷の体温を奪ってゆく。あったかいなあ。シーツがぐしゃぐしゃとしわをつくった。さっきまで暑いくらいだった体温はとっくにどこかに行ってしまった。まったんひえしょうってやつだろうか。わたしの手足はひどくつめたい。だから、こんなふうにくっついてたら竹谷が、つめたくなっちゃうよ。

「いーの、俺体温高いから」

わけてやるよと男前に言われてうわーいまのやばかった。なんかやばかった。きゅんとしたきゅんとした。おかげでなんだか顔があつい。指先もつま先も、ひんやりと色を失っていた(と思う。薄暗いからよくわからないけれど)白さは、徐々に色を取り戻しほんのりと染まってゆく。竹谷とおんなじ体温。はんぶんこだと笑う竹谷につられて笑って、指先も絡めとられて、手をつないで、またあした。


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20110103 ちしま