0719 財前

かたかたかたかた、鳴りやまないタイピング。画面から漏れる光。この場合の光というのはライト的な意味での光であり、けっして財前光が漏れているわけではない。あ、漏れてるってそういうことじゃなくて「おい」はいなんでしょう。



「ひとりだけ寝るなんて真似させへんぞ」
「だってねむいんだもん」
「だもんとか言うなや気持ち悪い」



いつにもまして光くんは辛辣です。わたし、泣いちゃう。
パソコンに向かう光のとなりでカーペットででごろごろしているのはわたし。つまんなーいねむたーいやってらんなーい。
だいたいね、レポートなんて期限ぎりぎりにやるもんじゃないからね。しかもね、明日は何の日かわかってる?「レポートの提出日」違います。光くん、あなたの誕生日です。



「もう、わたし、ねむい、ねる」
「あかん」



ベッドへと這い出そうとしたわたしの足首をぎゅっと掴まれた。バランスを崩してつぶれたカエルみたいになってしまった。部屋着とはいえ丈が短いからパンツ見えそうだなあといらないことを考えた。あと何分かしたら、光の生まれた日になるわけだけど、光、知ってる?



「おーもーいー」



うつぶせになったわたしのうえに光がのしかかる。つぶれちゃうよー。光はわざと体重をかけてるようだ。うぐぐ、うごけない。「光ー、寝ない、寝ない起きてるからどいてー」「ずっといっしょにおって」「え」今何かいった?光の声はわたしの部屋着に吸収されてしまったようだ。くぐもって、よく聞こえない。というか、くすぐったい。



「なんでもないわ」
「ちょ、おっぱいさわるな!」
「育たんなあ」
「育ってるわ!」



なんだっておっぱいの話をしなくてはいけないのか‥‥! 依然として退こうとしない光をわたしの秘められた背筋力でなんとかしようと思ったけどびくともしなかった。かわりに背中が変な音をたてた。「おばはんか」「どいてってばー」「いやや」レポートの続きはどうしたんですか光さーん。



「おん」
「なにー」
「0時」
「あ、おめでとう光くんー」
「あほっぽいで」
「光がのってるからでしょーおもいんだってばー」
「へーへー」



ころん、と光はわたしの上から退いて、となりにねっころがった。「うう、重かった‥‥」「お前より軽いで」どきどきどきーん。やっぱりそうなのかな、光ほっそいもんな、いや筋肉もあるけど一般的にみたら全然細いほうだもんね、それにくらべてわたしときたら。



「いやいやいやいやいや」
「冗談やろ、本気で動揺すんなや」
「さいきん食べまくってるから、そ、その可能性もなきにしもあらず、みたいな気がして」
「栄養ここんとこ行けばええのにな」
「だからなんでおっぱいさわるの」



じゃなーくーて、「光、誕生日、おめでと!これからも、よろしく!」真横にいる光は目をおっきくして、はいみなさんここから重要ですよ、スクープですよ、光がいつものふふんって笑い方じゃなくてふわーって笑ったから、わたしがびっくりしちゃった。



「なんやねん人の顔じろじろみて」



あ、もどっちゃった。





財前はぴば!0720


ちしま