シフォンガール 赤也


空は高くまで澄み渡っていて、春めいた風がふわりとスカートを揺らす。部活ばっかりの赤也が久しぶりにデートに誘ってくれたのでうれしくって昨日の夜からどきどきしちゃった。洋服もメイクもがんばったんだけど、変じゃないかな、大丈夫かな。



赤也は繋がれた手にぎゅっと力を入れて、へへっと笑った。かわいい、なんて言ったら怒られちゃうから言わないどくけど。



「晴れてよかったね」
「な!昨日まであんなに寒かったのに」
「寒かったよねえーマフラー出しちゃったよ」



せっかく冬物しまったばっかだったのに。おかげでクローゼットが爆発した。爆発っていうのは比喩だけども。お母さんには爆発って言われちゃった。帰ったら片付けます‥‥。
隣を歩く赤也の顔がとってもうれしそうに見えるので、私もにこにこしてしまう。



幸村ブチョーが、真田フクブチョーが、赤也のお話にはテニス部の先輩たちがよく登場する。私、先輩たちのこと、あまりよく知らないのだけど、赤也から聞いてる話によるととてもじゃないけど一般人には思えない。赤也も赤也ですごいと思うけど、赤也よりもすごい人たちなのかあ‥‥。憎まれ口たたいても、やっぱり先輩たちのこと、好きなのね。



待ち合わせだけ決めて、あとの予定を何も考えずに来ちゃったけれど、赤也と私のデートはいつもこんな感じだから、とりあえずふらふら、歩いてみることにする。今日は南側のほう。あ、きっと桜が綺麗だよ。まじか、そんじゃお花見行こうぜ。コンビニでお菓子買ってこうかあ。丸井先輩みたいに太るぞー。うるさいなー。



桜満開、ときどき風が遊んできて花びらを舞い散らせていくけれど、ひらひら舞う桜の花もまた、趣があるものよのうとうっとりしているとばりばりもぐもぐ、ポテトチップスを砕く音。



「風流を感じようとかないのー」
「花より団子だろぃー、あ、丸井先輩の真似ー」



まねっこした赤也が再びポテトチップスの袋に手を伸ばす。桜の花びらでも捕まえようかしらと立ち上がれば「わ、!」と、春何番になるのかな、すごい風。同時にめくりあがるスカート。



「きゃあああ」
「ば、ばかお前見せんじゃねーよ!」



私よりもうろたえた赤也が、がばっとパーカーを脱いだ。脱いだパーカーは私の腰へ。赤也の癖っ毛がほっぺたに触ってくすぐったい。腕の部分をぎゅうと縛られたそれは後ろのスカートがめくれるのを阻止してくれるようで。前は自分で抑えろよな!目をそらしながら赤也に言われて、あれれ、なんだろきゅんときちゃった。



「あ、ありがとう」
「どういたしまして!」



鼻を擦る赤也の隣にちょこんと腰かけてポテチの袋に手を伸ばした。叩かれた。俺のだってさ。けちんぼー。



シフォンガール


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ちしま