キャロット4

顔合わせをしたその日から、ウサちゃんから喧嘩を売られたはるのさん。ウサちゃん、もといウサコッツはどうやらはるのさんの着ぐるみがうさぎだというのが気に食わないようなのです。同じうさぎですからね、ライバル心でしょうか。はるのさんは初日にあんなに怒っていたのがうそのように、ウサコッツの様子をそっと窺いながら、アイスやらにんじんなどを献上していたのですが、アニマルソルジャーには糖尿の気のある子もいると耳にしてからは健康食品を捧げることにしていました。そんなはるのさんの努力が実ってか、デビルネコというネコちゃんがこっそりはるのさんと距離を縮めてくれているのです。びくびくしながら、タンスの影から様子をうかがっているのを発見します。すぐに逃げてしまうのですけれど。ウサコッツは相変わらずで、はるのさんの姿を見ると爪がうなるようで、いつでもしゃーっと牙をむきます。はるのさんはそれが哀しいので、ウサコッツと仲良くしようと一歩近寄りますがウサコッツは一歩遠ざかります。おいかけっこのはじまりです。しかしウサコッツには収納可能の羽がありますので、空を飛んで屋根へ逃げるのです。


「ウサちゃんっ、まってくださいーお友達になりたいんですーっどっこいしょー!」
「えっえええええ、!もーなにやってんの?人間なんだからのぼったらあぶないよー!」


ウサコッツが心配してくれたのがうれしくてはしごをつかって屋根に登ろうとするはるのさんですが、屋根のふちまであとちょっと、のところでつるりと手が滑ってしまいました。あ。


「! あっぶないなあもう!なにやってるのー!僕おこるよー!」


ウサコッツがふわふわゆらゆらとはるのさんの手を掴んで浮かんでいます、はしごががしゃーんと倒れました。ぷらぷらとゆれるはるのさんをどうにか屋根にのっけて、ウサコッツはふうと額の汗をぬぐいました。


「ありがとうウサちゃん」
「べっべつにっお前のために助けたんじゃないんだからねーっ」


ぷりぷりしながら言われてもあんまり怖くありません。むしろ、この前よりもウサちゃんがやさしくなったように感じられました。


「しょ、しょうがないから、にんじん食べてやってもいいけどっ!」
「、は、はいっ!こんど、たくさん持ってきますっ」


レッド殺してくる!と物騒な言葉を吐いてぱたぱたと飛んでいくウサちゃんを見送ると、はるのさんは重大なことに気がついてしまいました。屋根のふちに手を掛けて、


「お、降りられない‥」


どうしようかと思案していると、「パンツ見えてんぞ」レッドさんの声が真下から聞こえて、「えっうそっきゃああああああ」動転したはるのさんはつるりと落ちて、「ったくよー」レッドさんは曲がりなりにもヒーローだったので、はるのさんを助けるのなんて朝飯前どころか昨日の夜ごはん前でした。パンツ見えたのなんて気にしません。落ちる瞬間にはもうレッドさんははるのさんの真下にいました。それはもうまるで王子様のように素敵に思えましたが勘違いしてはなりません、彼はヒモです。はるのさんはお姫様だっこというか抱えられたままきゃーってなってます。


「ばっおめーなにやってんだよあぶねーな」
「ごっごっごめなさ、いろいろすみません、うあああごめんなさいいいい」


顔を真っ赤っかにして手で覆うはるのさんに立てるかと聞くとぶんぶんと首を縦に振りましたので地面に下ろすことにしました。はるのさんはうわああああと声にならない声をあげながらうずくまってしまいます、下着を見られたことがものすごくショックだったようです。


「気をつけろよな、悪の組織っつっても女なんだからよー」
「‥っ」


恥ずかしくてしにそうなはるのさんでした。今日は戦闘はお休みです。




キャロット4


ちしま