キャロット2

今日ははるのさんの初出勤の記念すべき月曜日です。気合を入れてスーツで出勤したものの「かっぽうぎ‥」ヴァンプさまはかっぽうぎにほっかむりをしてはたきをしている最中でした。やっぱり部屋はきれいにしないとね☆ちなみに掃除は上からやらないとほこりがちっちゃうよ☆なんてアドバイスをいただきました。逃げちゃだめだと言い聞かせ、はるのさんはお手伝いすることはありませんかと聞きました。そんな健気なはるのさんに振りかかったヴァンプさまのひとこと。とその前に、はるのさんの苦労についてお聞きください。


なんじゃこりゃああああ、と誰かさんもびっくりするくらいはるのさんは驚きました。せめて事務をやらせてくださいと頼みこんだものの、戦闘員が足りないから★という理由ではるのさんまで戦闘員として働かなくてはいけなくなってしまったからです。そしてヴァンプさまの経理の付け方がどうも気に食わないのでそれわたしに貸してくださいもう!と言ってしまったが最後、経理とかそういう事務ははるのさんのもとへとまわってくることになってしまったのです。身から出たさび、と言いますかなんといいますか、とにかく、はるのさんは過酷な状況を強いられていたのです。こういうとき、どこに電話かければいいんだっけ、たしかおーじんじおーじんじだったかなあと現実逃避をしているはるのさんに、容赦ないひとことが浴びせられました。冒頭に戻るわけです。


「これ、はるのさんの戦闘服だからねっかわいいでしょっ」


ヴァンプさまが喜々として語るそれはどう見てもうさぎの着ぐるみでした。遊園地で子ども達に風船と笑顔と愛嬌をふりまく、あの、着ぐるみのうさぎです。白だとすぐ汚れが目立つからという理由からピンクいろの着ぐるみうさぎ。焦点のあわない大きな瞳がはるのさんを見つめているようにさえ思えます。こっち見んなと言いたいはるのさんですがここはぐっとこらえます。


「なんですかこれ‥」
「だから、はるのさんの戦闘服。レッドさん、あっ、わたしたちの敵なんだけどね、彼、女子供でも容赦しないやつだから!」


レッドさんって、さんづけしてるところでまずおかしいだろうと思いつつ、この組織がなんだかおかしいことにはもう気がついているはるのさん。はるのさんはこめかみをおさえながら、これを着ればいいんですねと絶望的な声色で呟きました。もう常識は通じないのだと心で泣きながら。お母さん、わたしは悪い子です、悪の組織に手を染めようとしています‥。


キャロット2


ちしま