キャロット

春です。桜もひらひら咲き誇るピンク色が似合う今日この頃、天体戦士サンレッドは今日も今日とてヒモでした。かよ子さんはお仕事にはげんでいます。サンレッドを養うために。働け青少年、あ、青少年じゃないですね、ヒモでしたね。げふん!すみません、天体戦士は地球というか神奈川というか川崎を守っているわけですが、ここ川崎には悪の組織という、天使がいたら悪魔がいますし、正義の味方がいれば悪の組織がいるのも世の理です、悪の組織フロシャイムが存在するのです。


そんなフロシャイムには、今年、新入社員が派遣されてきました。


「ちょっと、話が、違うじゃないですかっ、」


声をあらげているのは若い女の子、女の子というにはいささか年上のようですが、今年大学を卒業したばかりのフレッシュマン、はるのさんです。はるのさんは顔をにんじんのように真っ赤にさせてぽこぽこと頭から沸騰させながら上司に抗議を申し立てています。はるのさんは、派遣先が悪の組織だなんて知りませんでした。靴屋さんの事務だと思っていたのです。


「わたし、おしゃれな靴がいっぱいあると思ってましたよっ!なんですかっヴァンプさまってなんですかっ!怪人ってなんですかっ!」


はるのさんに怒られてびくびくしぼんでいるのはフロシャイム川崎支部のえらいひと、ヴァンプ将軍なのですが、ただひたすら頭を下げています。


「あの、ほんと、ごめんねえはるのさん!なんだか、手違いがあったみたいで、ええと、」
「手違いってなんですかー!もう、わたし、どうすればいいんですか、お母さんに就職できたよーって手紙送っちゃったじゃないですか!う、」


はるのさんは泣きそうです、うっすら涙もたまってきています、いまにも零れ落ちそうな涙にヴァンプさまはもういてもたってもいられません。あわててハンカチを差し出すとはるのさんに差し出しました。はるのさんは律儀にも「ありがとうございます‥」と一礼しました。ハンカチが涙を吸って、ちょっと色が変わりました。そしてふたたびヴァンプさまをきっとにらむはるのさん。


「ああああどうしようゲイラスくん」
「なんで僕にふるんですか!なんとかするのヴァンプさまでしょうが」
「悪の組織ってなんですかあ‥ひっく、うう、悪い子になっちゃうじゃないですか、うう、セーラームーンになりたいですよう」
「(セーラー‥?)でも、もう、配属されちゃったし、あの、」
「わかってますよう腹くくればいいんでしょくくれば!いいですよわたしわるいこになりますよなにやればいいんですかちくしょう!」


普通の会社だったらそっこーで首にするところですがここは悪の組織です、そんな常識は覆されてしまいます。何よりはるのさんは腹くくったようなので悪の組織の一員になることになりました。フロシャイム川崎支部には、今年、新入社員が入社しました。



キャロット




シリーズになる予定です*

ちしま