崖の下にチョコ 千歳

こないだの金曜ロードショーについて語る千歳とはるのの周りがめっちゃきらきらしとって、あそこはメルヘンゾーンなんやと思って近づけんわ、と後ずさりしてしまう。ポニョかわいかったねえ、いやいや、そうすけのかわいさもゆずれんたいね、はいはい、さよかさよか。俺はリサがいっちゃんかっこよかったと思うで。‥‥やなくてなんやのんあれ‥メルヘンすぎてついていかれんわ‥ぱっぱと着替えたろ。



「ちとせえー!」
「お、金ちゃんは今日も元気たいね」
「金ちゃん金ちゃん、今日はいいものあるよー」



がちゃーん!と部室の扉が開いて、金ちゃんが嵐のように飛びこんできた。おお、金ちゃんの目が輝いとるで。なんー?と目をきらきらさせて、はるのにひっつくので千歳がさりげなく引っ剥がす。金ちゃんはこっちたいと笑って、金ちゃんもにこにこしながらちとせえー、と千歳の大きな手で遊んでいた。ほほえましいやらうっとおしいやら。なんや夫婦かあいつら。



「あのね、おいしくないかもしれないんだけど」



そう前置きしてからはるのはリュックから青い包み紙と黄色い包み紙を取りだした。どちらもチェックの模様で、お揃いのリボンがかかっとる。



「バレンタインだから」



あげる、とほんのり頬を朱に染めて、はるのはそれをふたりに差し出した。千歳はきょとんと眼を見開いた後、むぞらしかー!とはるのをいきなり抱きしめた。って、おい!何やっとんねん!ちゅーか俺にはないんかい!俺は空気か!きゃー、とはるのがチョコを非難させつつ千歳の影で見えなくなった。チョコと腕だけがゆらゆら揺れとる。



金ちゃんがぽいっとはみ出されたので「ワイもワイもー!」とふたりに飛びついた。3人でおしくらまんじゅうみたいにぎゅうぎゅうしだして、お前ら何やっとんねん!ってつっこみ二度目っちゅー話や、!ほんまにもう、やってられんわ。浪速のスピードスターはここらで退散しときますよって。ランニングでもしたろか。



そんでもって、はるのからの義理チョコはチロルチョコやった。かわいそうな俺たち。



崖の下にチョコ



▼ちしま!ちとせ!すきー!!!!
短めバレンタイン
ちしま