ゆめにしずむ ドラコ
お昼下がりの木曜日、めずらしくお休みになった授業の時間を埋めるべくわたしは談話室でお昼寝でもしようかと目論んでいた。うんうん、このソファなら暖炉も近いし、誰にも邪魔されることなく寝られるだろう。
「ああ、ななくさじゃないか」
ああ、やってきてしまったわたしがいちばん会いたくない相手!そうだよなあわたしが休講だったらドラコも休講になるよなあ。
じゃなくて、わたしはお昼寝がしたいのだ、それは誰にも邪魔されたくないわけで、それがお坊ちゃんのドラコ坊やであっても、その手下(だっけ、)の大きいふたりにも友人のパンジーにさえも邪魔されたくないわけで、つまり、
「おやすみマルフォイ」
「な、なんだお前この僕が声をかけてやったのにおやすみってなんだおやすみって」
「…うるさい、わたしはねむい、だから寝る、以上、おやすみ」
ソファにもたれてローブをブランケット代わりに目を閉じる、「おいななくさ、」うるさいー、ななくささんはおやすみするんですー。声かけないでくださいー、「……」、おや、急にしずかになったぞ、これはこれで怖いな、顔に落書きされてたらどうしよう、そしたら三倍返しにしてやるけど。
ふいに右隣が沈む、ドラコかな、かすかにドラコのにおいが香って、あ、やっぱりドラコだ。独特だからすぐわかる。わたしは目を閉じたまま眠りの世界へ入ろうと、羊を一匹二匹と数え始める、のに、あれ、どうしてか脳みそが休もうとしてくれない。体は睡眠を求めているはずなのに、昨日は夜更かししてしまったから眠くて眠くてたまらなかったはずなのに、どきどきしてへんに呼吸が苦しくなって、ゆっくり、吸って、吐いて、いつもの寝る前の呼吸を心がける。
「、 ななくさ?」
ドラコの手前起きるのも癪なので寝たふり、寝たふり。
「……」
「…、おやすみ、」
ななくささんは寝ています。起きていません。熟睡中、です。だから君に名前を呼ばれても、返事をすることはできません。
次の授業まであと何分だ、早く早く時間が過ぎてくれればいいのに、隣に触れる体温にわたしの体温が急上昇、眠れないねむれない、しょうがないから隣で照れているであろうドラコのローブをそっと握った。
光へ!
0519
ちしまふうろ
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