ふたりじめ 千歳
もともとスキンシップの多い子ではあるとは思っていたが、今日も今日とてソファでぼーっとしていた千歳の膝のうえに自らすすんでまたがって、千歳の髪の毛をわしゃわしゃとかきまわすのはななくさで、ななくさはにこにことなにがそんなにたのしいのか千歳の髪の毛をくるくると指にまきつけたりぐしゃってしてふわってさせたり、千歳はされるがままにじっとななくさをみつめている。
何がそんなに楽しいのかわからんたいね。が、ななくさが楽しんどるならそいでよかばってん。
長身の千歳と女子の平均的身長であるななくさはこれでようやっと身長が近づく。髪の毛いじりに飽きたのか、幼子のように腕をまわすななくさに苦笑しつつ、千歳自身も腕をまわす。他人からみたらコアラのようだ。ユーカリとコアラ。なかなかぴったりである。
白い首筋があらわになって、思わずかぶりつきたくなる衝動にかられたが、そこは持ち前の菩薩のように広いこころにおしこめて、ぎゅう、と腕に力を込めるだけにとどめておいた。
「ななくさー、」
「なーん?もしかして、おもたいん?ごめんなあー」
言いつつ膝の上から退く気はないようで、ななくさは千歳と向かい合うように目を見つめた。表情のくるくる変わる子だ。まんまるの瞳は千歳から目をそらさない。負けずに見つめ返すとななくさは破顔する。
「せんり、!すいとーよ!」
「‥」
何を言うかと思えば!ななくさはにこにこと、それでいてちょっとだけ恥ずかしそうにうつむいて、再び千歳と目をあわす。
「あんな、わたし、いつもちとせにすいとーよって言われてうれしかってん、お返しや」
あほの子ほどむぞらしかってこういうことを言うのだなあと千歳はふにゃりと笑った。腕のなかのちいさな体温がいとおしい。今度じぶりの森いこうやー、とどこか斜め上を行く彼女をむぎゅうとちからのかぎり(もちろんてかげんはしてるつもりだが)だきしめると、胸のあたりがななくさの吐息でぽかぽかした。
「俺も、すいとうよー」
「 くるしいよー」
ふたりじめ
ちとせのしゃべりかたってむずかしい‥!
ちしまふうろ
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