コマさんとその後の話

 こないだ駅前でクラスメイトのケータくんとへんなソフトクリームおばけとねこおばけと、コマさんという狛犬?のおばけとあってからというものの、学校でもケータくんたちに絡まれるし、いままでわりと無視していたおばけたちにも声をかけられるようになってしまって、普通の小学生のわたしとしては大変いかんである次第であります、あ、また頭いいこと言っちゃった!


 ケータくんたちが話してるのをみてるといつもさわがしいし、さいきん教室でもうざ絡みされることが多くなって、なんかもうめんどくさ、くはないよ、うん。いややっぱりめんどくさいかな。それでもケータくんとしゃべってるうちに他のクラスメイトの子たちも話しかけてくるようになって、わたしのクラスでの立ち位置は、ただのへんなやつから、ちょっと変わってるけど意外と普通なやつにレベルアップした。アップか?ダウンか?


「おねーさん、おねーさん」


 わたしのスカートのすそをひっぱるのはかわいいかわいいコマさんなんだけど、おばけはあんまり関わりたくないけど、コマさんは別っていうか。だってかわいいし、もふもふしてるし。あのソフトクリームみたいのとか、ねこみたいのとかとちがって、騒がしくない、おっとりしたとてもかわいい子だ。


 コマさんは電車に乗ったり、バスに乗ったり、現代的な?おばけだけど、わたしが人前でひとりごとしゃべってるとへんな顔してみてくるおばさんおじさんたちがいるせいで、さいきんのまちあわせはもっぱら神社が多かった。たぶん、ケータくんからのアドバイスだと思うんだけど、やるじゃんケータくん、そしてそれを守るやさしいコマさん。いい子だ。


「それでどうしたの、コマさん」
「・・・話があるズラぁ」


 いつになく深刻そうな顔でコマさんがそんなこというものだから、ちょっと身構えてしまう。どうしたのかな、おなかでも痛いのかな。


「あの、えっと、その、」
「うん、どうしたの、ゆっくりでいいよ、」
「あの・・・田舎のおっかぁに、か、彼女ができたって、手紙を書いてしまったズラ」
「えっ!そうなの?!おめでとう!」
「・・・違うズラ! お、おねーさん、おねーさんがもし、彼女だったら、オラ、とってもうれしいズラ・・・!」


 ん・・・??? なんだか話がおかしいことになってきたぞ・・・???


「えっと?」
「えっと、オラ、おねーさんのことが好きになってしまったズラ!」
「うん・・・?」
「だから、彼女になってほしいズラ!」


 がば!と目の前に差し出されるそれは、いつのまに風呂敷から出されたのかわからないけれど小さな花束で、新聞紙で包まれている手作り感あふれるものだった。え、でも、小学生なのに、彼氏とか、はやくない・・・?


「え、でも、いいのかな、コマさん」
「オラ、おねーさんのやさしさに感動したズラ!コマじろうもきっと、おねーさんのこと大好きになるズラ。でも、でも・・・、」
「うん・・・?」
「オラ、おねーさんのこと、だいすきズラ」


 こんなにキラキラとした瞳で見つめられたら、「お、おねがいします・・・」って言うしかないでしょう。わたし、小学生にして、彼氏ができました。しかも、おばけの!こんな小学生はじめてじゃないですか。お父さん卒倒しちゃうなこれ。ていうか紹介できないな。


「ホントズラ!?ウソじゃないズラ!?う、うれしいズラァ・・・!」


 小さな花束を受け取ると、ふわりといいかおり。きっとコマさんがお花も摘んでくれて、一生懸命、包んでくれたんだろう。想像しただけで、ほっぺがゆるむ。


「コマさん」
「ズラ?」
「これから、よろしくおねがいしますね!」
「任せるズラ!オラ、いっしょうおねーさんのこと守るズラ!」


 わたし、コマさんにきゅん殺しされるかもしれません。


 後日、コマさんがオラの彼女になったズラ!ってケータくんに改めて紹介されて一悶着あったのは別のお話。めでたしめでたし!



▼コマさんとその後の話
深雪さんへ!
2016/04/20 ちしま