新緑 真田


朝からやけに騒がしいと思ったら、隣の席の真田くんがお誕生日だかららしい。朝練を終えて教室に入った真田くんは目を見開いて、教室で待っていた女の子たちに小さな声でありがとう、と礼を述べているのを見て、見た目は怖いけれどみんなに慕われるわけがわかった気がした。


教室はなんだか女の子であふれていて、当社比1.7倍、小さな包みからなにが入っているのかわからないような箱もあって、机からはがっつりとはみだして、おかげでわたしの机にも侵略されている。すごいんだなあ、真田くんて。いつもは怖そうだと思ってたけれど、今日は顔をほのかに赤くしてお礼を言ってるんだもん、なんだか、かわいい。こんなこと言ったら怒られそうだけど。


「はるの、すまない」
「だいじょうぶだよ、お誕生日、おめでとう」
「、あ、あー、ありがとう」


おお、なんだかレアだ、あの怖そうな真田くんが頬を赤らめている。ちょっと目線をそらして手で口元を隠すので幸村くんがいたら写真とか撮ってあとでなんかしそうだなあなんて余計なことを考えて、


「ほんとに余計なことだねはるのさん」
「ゆ、幸村くん!」
「まさにそれをやりにきたところだよ」
ぴろりろりーん、
「ええええ幸村くんおはよう!」


じゃなくて、びっくりした心読まれた、わたしの後ろには幸村くんがいて自前の携帯カメラで真田くんを激写していた、な、なにに使うんだそれ、まさか待ち受け「そんなわけないだろう、俺が弦一郎の写メを待ち受けにしてどうするんだい?これは蓮二に資料としておくる」お、お、おっかねー!部長おっかねー!正直部長とは付き合いたくないな、助けて副部長!頼りの副部長こと真田くんはぷるぷるしながら(お、怒ってるのかな)、


「た、た、たるんどる!」
「たるんでるのは君の頬だよ」
「ななな、そんなことはっ、笑うなはるのっ」


だって、いままでのイメージと違いすぎて。怒ってるんじゃなくて照れてるんだ、きっと、なんだ結構おもしろい人じゃないかと鞄にひそませていたチュッパチャップスをプレゼントだと差し出すと、目をまんまるくさせた真田くんに再びシャッター音が降りそそいだのだった。


新緑


HappyBirthdaySANADA!



0521
ちしまふうろ