-----アツヤの手紙


にいちゃんへ



にいちゃん、元気ですか?
今にいちゃんは何才になりましたか?

おれは今6さいです。


おれの今の夢はサッカーせんしゅです。にいちゃんもおなじです。
にいちゃんと今のおれの夢はなんですか?

もうサッカーせんしゅになってますか?

にいちゃんとおれは、今もなかよしだといいな。


もしにいちゃんが、おれと喧嘩しているさいちゅうだったら、おれをゆるして仲直りしてやってください。

いつもけんかのときは、おれが悪いことがおおいので、きっと今もそうだと思います。
だから今のおれのことをゆるしてやってください。


きっと未来でも おれはにいちゃんが大好きです。


さいごに、もしこれを読んだときに、タイムマシンがあったら、おれに会いにきてください。

約束です。


さようなら


アツヤより

士郎 今 どこにいる?


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手紙を読み終えれば、僕は堪えた涙がまたあふれそうになるのを我慢して、じっとその黄ばんだ便箋を見つめた。
久しぶりにみたアツヤの字は、孤独に苛まれかけていた僕をすこしだけ癒してくれた。


「吹雪っ俺にもみせてくれよ!」
「うん、いいよ」

身を乗り出した円堂くんに便箋を渡せば、彼は持っていた箱をどかりと床に置いてそれを受けとった。

決して長くはない手紙。
読み終わるのにさほど時間は要さない。
顔をあげた円堂くんは、よかったな吹雪!と自分のことみたいに嬉しそうに笑ってくれた。

「俺も見ていいか?吹雪」

あまりに嬉しそうな僕と円堂くんに、優しく口元に笑みをうかべた豪炎寺くんがそう言ったのを皮切りに、みんな口々に俺も俺もと興味を示した。

「ふふ、いいよ。でもそれ、大切だからみんなやぶかないでね」

はあいっと声をそろえるみんなより先に、便箋を受けとって文字に視線を走らせる豪炎寺くん。
微笑ましげに読んでいた豪炎寺くんだったけど、ふと眉をひそめて難しい表情になったかと思えば、その視線は僕にむけられた。

「どうかした?」
「なあ…吹雪。最後の一文おかしいぞ。」

そう言って、すこし声をひそめた豪炎寺くんは、持っていた便箋を僕に向ける。


最後の一文…?

言われてもう一度読みかえしてみる。
二三度見てみたけど込み上げてくるのは懐かしさと愛しさだけだ。

僕がわけもわからずしばらく便箋を見つめていたら、異変を察知した鬼道くんが徐に隣から便箋を受け取る。

「すまない、俺にも見せてくれ。」

豪炎寺くんと同じように手紙に視線を走らせる鬼道くんをみていたら、言い知れぬ不安が頭をよぎって僕はジャージの裾をぎゅっと握った。

「たしかにおかしい…」

顔をあげた鬼道くんは、ゴーグル越しに僕に視線を向ける。
その赤い瞳にいぬかれて、僕は緊張にごくりと軽く喉をならした。

「吹雪、最後の一文。わかるか?『吹雪、今何処にいる?』この文だ」

うながされて便箋に視線を落とす。

ざわり…
と心に波がたったような感覚がした。

気づかなかった小さな違和感。
僕は、久しぶりにアツヤに会えたようなうれしさに、多少なりとも盲目になっていたのかもしれない。
でもいまならわかる。この一文にある違和感が。

言葉をなくして浅く息をする僕に、豪炎寺くんがくちをひらいた。



「吹雪。この文だけ文面に違いがある。それに、ほかは鉛筆でかかれているのにここだけボールペンでかかれていて真新しい。



みるかぎり、最近書かれたものだ。」

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