私は運命なんてものを信じるほど純粋ではないし、一生なんて簡単に約束できるほど子供でもない。 あなたは私をまるで何も知らない無垢な少女の様に大事に扱うけれど、私だってあなたを好きになってそれこそ色んな感情を知って、もうただの子供ではないんだよ。 珍しく私の方から二回目をおねだりして、必死に上で動いてみたのに終わってみればあなたは気持ちよかったよ、なんて息一つ乱さず涼しい顔で私の手にキスを落としたりして。 私はと言えば、彼の上で汗だくの顔を覗かれて肩で大きく深呼吸して、それはもう無様。 無性に悔しくて、彼の上から降りるなりごろんと背中を向けてみれば、さやかな抵抗も虚しく私の頭をくしゃりと撫でると鼻唄なんて歌いながらそのままキッチンに行ってしまった。 撫でられた髪の毛がじんとする。 なんだか私ばかりがあなたを好きみたいで馬鹿みたい。 ミネラルウォーターを飲む彼の背中や、ペットボトルを持つ腕の節とか。 か細い女の私のそれとはやはり違っていて、ああ別の生き物なんだなって思い知らされる瞬間がいつもくすぐったくて切ない。 キッチンまでの数メートルの距離さえもどかしくって、触れたい衝動を押さえきれなくて。 裸のまま彼の大きな背中にぎゅっとしがみついて、悔し紛れに爪を立ててみれば痛っ、と彼が言った。 「どうしたの?」 「・・・・」 何故だか涙が滲んだのは、想像よりもあなたの背中が熱かったから。 泣いてるのが知れたら、あなたはまたからかいながら私の涙をぺろりと舐めて子供をあやす様に抱きしめるでしょう? 子供扱いなんてしないで。 けれど結局私だって、いつもそれで安心して泣き止んでしまうから文句は言えないのだけれど。 「千鶴ちゃん、可愛い。」 ほら、そうやって。 私を抱きかかえて耳元で囁いてベッドまで運ばれて。 ミネラルウォーターでひんやり冷えた唇で私の全部を甘噛みする。 湿度の高い部屋に二人のため息が漏れて甘ったるい空気に窒息しそう。 いっそ、二人で溺れてしまうのも悪くはないけれど。 「・・・ね、していい?」 掠れた声で切なげに私を欲しがるあなたに漸く私の半分こに欠けた心は満たされるの。 ねえもっと必死になって。 なんて、口にしたらそれこそ子供みたいだね。 結局私はあなたに愛されたくて、必要とされてくて。 求められたくて、触って欲しくて。 あなたが思うような可愛い少女なんかじゃないのよって。 そんな私のジレンマすら見透かしたように深い緑色の瞳をゆらゆらと揺らしながら好きだよってキスをするあなたが一枚上手なんだって。認めたくはないけれど。 嗚咽をキスで殺して prev top next |