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徐庶が花魁


白い、しかしきらびやかな襖の続く廊下を抜けて、私は心を弾ませる。

少し質素な部屋の前で足を止めると、中から緊張したように衣擦れの音がした。


それに躊躇わず緩やかに襖を明ける。


燈籠の灯りに照らされて、困ったような笑みを浮かべている彼。



「こんばんは、元直殿。」

「あ、えと、字で呼ぶのは…」

「ああ、ごめんね、徐庶。」


深い翡翠のような色を身に纏い奥に縮こまるように座する彼は、座敷持ちだ。


「また、来たんですね。」


訛りのない綺麗な言葉。私が好きな顔で、出迎えてくれる。


「ええ、貴方が好きだからね。」



ここは郭のなか。
そして彼は春を売る花である。
最も、彼と懇意にしている輩など、自分だけだろうが。



「どうして、俺なんか。」


彼はいつも私の顔を見て、二言三言目にはそう言う。

そして、次に決まって、


「俺なんかより、」
「もっと綺麗な人がいる?」
「たとえば、」
「郭嘉殿とか。…またなの、徐庶殿。」


私が聞き飽きるほど聞いてきたその男は太夫だ。会おうと思えば何時でも会うことは出来る。
郭嘉は客を断らないことで有名であるし、私だってそれくらいの甲斐性はある。



「元直、何度言ったらわかってくれるの?私は貴方がいるから、貴方だからここまで来るんだよ。」

「でも、」

「今日は大切な話があるの。」



貴方を身請しようと思う。


そう言えば彼は目を見開いた。


「み、うけ、って。」

「店主にはもう話を通してある、後は貴方の返答次第だよ。」


ここをやめて、私と一緒になって欲しいと伝えれば、彼は涙を流した。






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思いの他長くなってしまった…。
友達が神ネタを投下したのでそのネタを拝借しました。
感謝

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