鍾会と心
「私は、お前の心が欲しい。」
淡い色の衣を纏った自他共に認める英才は、私を見詰めそう言った。
色素の薄い瞳に光が移り、鼈甲のように見える。
「何を仰せになるのです、私の身体は、心臓も、髪の毛の一本も、貴方様の、鍾士季様の物です。」
そう言えば鍾会様は癇癪を起こした子供のように、ちがう、と叫んだ。
「ちがう!違う違う!私は!お前の心が欲しい!!」
そう泣く男は、なんて憐れなのだろうと思った。
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