口が聞けない女の子と鐘会4
青い月明かりの中、しきの頬は柔らかい白を帯びていた。
静かな寝息をたてて上下する胸。
長いまつげ、整った顔立ち。
初めて見たとき、なんて綺麗な男だと思った。
同じ人間とは思えなかった。
白い布に埋まる色素の薄い髪を撫でる。
頭を撫でた。頬に触れる。
『
私、もうすぐ帰るみたい。ありがとうしき。愛してた。
』
私の言葉。
しきには通じない言葉。
そうして私は、ずっと私は、しきの寝顔を見詰めていた。
(さようなら)
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