口が聞けない女の子と鐘会3
わたしをここに置いてくれるしきは、とてもいい人だ。
わたしが聞くことしか出来ない言葉を教えてくれるし、ここに住むことを許してくれる。
でもどうしてわたしはしきの部屋にいたんだろう。
「しき、わたし、ここにある。何?」
「知らん。お前にもわからないのでは私が知るよしもないだろう。」
「ん、しき、言う正解。でも、何?わたし、不可解。」
どうしてしきの部屋にいたのか。
しきの言うことは正しいけれど、どうにも不可解だ。
「、…帰る方法がわかるまではここにいればいい。」
しきは読んでいた書を横に置くとわたしを抱き締める。
香のような粉っぽい、甘い匂いがした。
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