清正とおちる
「私は清正が好きよ。」
「…ああそうか、俺もお前は大切な妹みたいなもんだと思ってる。」
長い事姿を見なかった妹分が、ふらり、と深夜自室を訪れたのは先程のこと。
積もる話をして、蝋燭の灯りの中照らされた、白いかお。
「清正、私を抱いてよ。」
ちょっと醤油取ってよ、くらい軽い言葉だった。
こいつは今なんと言ったのだろう。
自分を抱けと言ったのだ。
「…、それはできない。」
「じゃあ、私は抱かなくていい、おねね様を抱いてるつもりでいい。」
胸は少し小さいけど、と無邪気に笑ったその顔は、昔とかわらず希望に溢れている。
内容と表情がちぐはぐだった。
「ねえ。」
「っんな事出来る訳っ…!!」
言葉が出なかった。
彼女に向けた目には、どんなに手を伸ばしても届かないあの人がいた。
「お、ねね…様…」
「いいこだね、清正。」
駄目だとわかっていた。戻れなくなるとわかっていた。
それでも。
「ッ―――くそッ!!!」
「清正、好きよ。好きよ…」
「って言う夢を見た。」
清正抱いて、と言えば彼は顔を真っ赤にして馬鹿!と叫ぶ。
「お前はなんて夢を!」
「…でも、私が清正への想いを馳せてた頃、想像してたのはあんな内容じゃすまなかった気がするよ。」
「え」
「まあいいやー」
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