一年前の思い出に浸りながら、街を歩く。
どこもかしこも恋人だらけで。
少し彼の温もりが恋しくなった。
もう一年たつというのにまだ恋心は消えない。

『今話題の新人歌手!!K!彼の新曲はクリスマスにぴったりのバラードとなっています。是非恋人とお聞き下さい。』


路上のモニターから聞こえた広告。
ふと見上げれば、一年前に別れた恋人の姿。
夢を叶えているその姿に嬉しさが募る反面、
手の届かないところに行ってしまった悲しさ。
まぁ一年前の時点で繋がりはきれているのだけど。

ずっと好きだった彼の歌を聞きたくてその場に立ち止まる。

「え……、」

思わず声が漏れる。

恋人と夢を天秤にかけて、夢をとった。
夢が叶って嬉しいはずなのに心に大きな穴が空いている。
何が足りないかは分かり切っていた。
会えるかわからないけど会いに行くよ。
一年前のあの場所で待ってる。


それが曲の内容だった。
まるで俺と元親のことのよう。
そんな筈ない。
そう思うのに、気が付けば駆け出していた。
約束をしていた。
あの話を聞く前に。クリスマスは一緒に過ごそうと。
駅前のツリーで待ち合わせしようと。

「はぁはぁ、」

急いで駆けつけた駅前。
人目を引く銀髪。
間違えるわけなかった。
この一年恋い焦がれた彼。
息を整え彼の前にたつ。
顔を上げた彼と視線が交わる。
口を大きく開けて笑ったその顔を見た途端、腕を引っ張られて抱きしめられた。

「慶次……!!ずっと好きだった。もう二度はなさねぇ。」

「もとちか…、元親!!」


背中に手を回し彼を強く抱き寄せる。
もう二度離れないように。





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