12月25日。
クリスマス当日。
仕事を頑張って終わらせて、急いで駅に駆けつけた。

「6時45分……、ギリギリセーフと。」

ツリーの周りは待ち合わせをするカップルで溢れていた。
その中に小十郎さんの姿はない。
待ち合わせには少し早いからまだ来てないのだろう。

「メールだ…、」

コートのポケットに入れていた携帯が震えて、取り出して確認すると一件の新着メール、

『急に仕事が入った。遅くなる。必ず行くから。』

「はぁ……。」


思わず溜息が漏れてしまう。
何時ものこととはいえ、胸に湧き上がる虚無感。
ツリーの側にあったベンチに腰かける。
何処かに入ろうかとも思ったけど、小十郎さんがいつ来るかわからないし、クリスマスの夜だ、どの店も満席だろう。

ぼんやり周りを眺めながら時間を潰す。
街を歩くカップルは皆幸せそうだ。

「雪だ……!!」

「本当、綺麗!!」

聞こえた声に空を見上げれば、しんしんと降り積もる白い結晶。

「ホワイトクリスマスか……。」

想い人はいつくるのだろうか。
待つことには慣れている。でも早くきてほしい。

「佐助!!」

呼ばれた名前。
此方に走ってくる小十郎さん。

「悪ィ、待たせたな。」

「ううん、大丈夫。」

「大丈夫じゃねぇだろ、雪、積もってる。」


小十郎さんが肩に積もっていた雪を振り払ってくれる。
思ったより長い時間待っていたらしい。


「これ、待たせた詫びだ。」

「ポインセチア?」

小十郎さんがずっと持っていた包みを手渡される。
中を覗けばクリスマスの定番の赤い花。
植木鉢のそれはプレゼントには似合わない。

「会社の前の花屋で見かけてな、俺の気持ちだ。」

「ふふ、小十郎さんらしいね。ありがと。」

「あぁ、行くぞ。」

小十郎さんの横に並び歩き出す。
これからもずっと彼の隣で歩いていたい。

ポインセチアの花言葉、
私の心は燃えています。








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