さよなら、大好きな人



恋人で、愛されている自覚はあるけど
あの人の一番は主で。
もし俺たちを天秤にかけたら、迷うことなく主をとるのだろう。
それは昔も今も変わらない。

「そういうところが好きなんだからどうしようもないよなぁ……。」

思わず漏れた本音は、誰にも聞かれるとこなく消えていった。
ことの始まりは昨日。
お互い仕事に、家事に主の世話に忙しく、久々のデートだった。

デート中に入った一本の電話。
それは呼び出しの電話で。
仕事の電話ならまだ許せた。だが、それは
彼の上司の息子から。
なんら関係のない人に思えるが、その息子というのは彼の前世の主で。
義理堅い彼のことだ、無下には出来ないのだろう。
それがしようもない呼び出しだったとしても。

「俺と仕事とどっちが大事なの……。」

ずっと思っていたことだった。
正しくは俺と主とどっちが大事なのか。
だが。
それは聞けなかった。

じゃあお前はどっちだ。

そうかえされるのはわかっているから。
そして応えられないのだ。その問いに。
どちらも大事だから。
自らが応えられない問いを投げかけるつもりはない。

「別れた方がいいのかな……。」

声に出したらそれしかない気がしてきた。
別れてしまえばこの気持ちもなくなるだろう。
彼も主のことを最優先にできる。

『さようなら。』

一言。
別れを告げるには短すぎる気もするが、
この関係にはこれくらいが相応しい。


さようなら。
この世でただ一人愛した人。
きっと彼以上に愛しせる人はいないだろう。
前世からずっと愛してる人。




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