誰よりも君を想う
寂しくて寂しくて。
奥州と上田では頻繁に会うことは叶わない。でも会いたい。 。
想いは募るばかりだった。
それは出来心だった。
寂しさを紛らわすために。
目の前にある陣羽織を見つめる。
それは普段みにまとっているものとは異なるもの。
蒼色の陣羽織。
防具に入った雷模様。
政宗殿の陣羽織を彷彿させる 。
馴染みの呉服屋に頼んでつくってもらった。
政宗殿に似た陣羽織を羽織れば寂しさも紛れるかと思って。
仕上がったものを今日もらってきたのだが。
「これを着るのは少々恥ずかしいな
……。」
出来上がったものを手に取ると思っていたより政宗殿の陣羽織に似ていて。
恥ずかしさがまさってしまう。
「これを着て出陣するわけにもいかないしな…。しまっておくか。」
勢いでつくったものの着る機会はない。
政宗殿に会いたくなった時に取り出して見つめるくらいにしておこう。
「……折角だから一度着ておくか。」
陣羽織に腕を通し、防具も身につけ、鏡の前に立った。
違和感。
最初に思ったのはそれだった。
やはり似合わない。
心に湧き上がるのは虚しさのみだった。
寂しさは紛れない。
むしろ募るばかりだ。
会いたい。蒼を身に纏う彼の人に。
「はぁ……。脱ぐか、」
「珍しい格好してるな?幸村。」
突然聞こえた声に驚いて振り向けば、今まで想っていた人。
「……ま、さむねどの、何故ここに…。」
部屋に入ってきた政宗殿に力強く抱きしめられた。
「……俺の陣羽織羽織るとか可愛いことするくらいなら会いにこればいいだろ。」
耳元で囁かれた甘い台詞。
政宗殿がここにいることを実感したくて強く抱きしめ返した。
.
[ 43/45 ]
[*prev] [next#]
[小説一覧]
[しおりを挟む]
[
しおり一覧]