この恋を


第四王子。
それは跡取りにもなり得ない立場。
他の王子には皆取り入ろうと必死だった。
だが俺には目もくれなかった。
存在さえ無視されていた。
生まれてからずっとそんな状況だったから国とか、王政とか全部関係ないと思ってたんだ。

「婚約……?」

「あぁ、お前は隣国の第三王女と結婚し、隣国にいってもらう。」

「どういうことだよ!?俺は……。」

突然父から告げられたこと。
寝耳に水だった。
今まで存在を無視し続けたというのに。
有能な兄を隣国にさしだすわけにはいかないのだろう。

「俺はいかないから!!」

「佐助っ!!」
それだけいいのこして部屋を飛び出した。
たどり着いた先はいつもいっている屋上庭園。
ここは俺だけの場所だった。
子供の時からずっとこの場所で遊んでいた。

「佐助様。」

「なに。」

花を眺めていると後ろからかかった声。
振り返らなくてもわかる。
この場所に俺がいるとわかるのは、幼少の頃からの世話係小十郎だけだから。

「なに。」

「結婚の話を聞かれたのでしょう?」

「知ってたの……。」

「ええ。陛下かららききました。」

この有能な世話係は説得するように言われてきたのだろう。
子どもの頃からしられていることもあって小十郎には頭が上がらないから。

「隣国の第三王女は素敵な方です。あの国は国土も豊かだ。きっと佐助様も幸せになります。今は混乱しているでしょうが、この結婚にデメリットなどないのですよ?」

「………俺の、」

「はい?」

「っなんでもない。一人にしてくれ。」

「……失礼します。」

遠ざかる足音を聞きながらその場にうずくまった。
小十郎が吐き出した言葉はどれも正論で。
聞きたくなどなかった。
結婚しろだなんて、そんな…。
俺の気持ちはどうなる。そう反論しようとして飲み込んだ。
誰も俺の気持ちなど汲んでくれない。王子として生まれたのだ仕方がない。
でも心の整理はつかなかった。
結婚も、隣国にいくのも。
なにもかも嫌だった。だって……。

「お前が好きなんだよっ、小十郎……!!」

ずっと秘めていたこの想い。
王子と世話係。それ以前に男同士で。気持ちを伝えるには障害がありすぎた。
でもこんなことになるのなら伝えておけばよかった。

「ねぇ、小十郎。お前と離れ離れになるのなら俺は死を選ぶよ。」

小さく呟いた言葉は、
庭園に揺れる花々だけが聞いていた。





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