笑顔を見せて



降りしきる雨が音も温もりも何もかも全て消しさった。

壮絶な戦だった
たくさんの兵士が命を落とした。
踏みにじられた軍旗が辺りに散らばる。
そんな中。
服が濡れるのも気にも止めず地面に脚をつく青年。
彼の腕の中には一人の青年。
腕の中の青年の命はもうつきかけていた。

「慶次……!!しっかりしろ!!
頼むから……生きてくれよ……。」


青年の慟哭さえ雨音に掻き消されてく。


「……も、とちか…。ひとつ、お願いが……、」

「喋るな!!後で何でも聞いてやる……。だから…。」

青年の願いも虚しく、命の灯火はどんどん小さくなる。

「……笑って、欲しい…最期に……」

「……っ、」

溢れる涙を堪えて青年は精一杯の笑顔を見せた。


「……ありがとう、…。元親と…、出逢えてよかった……。」


その笑顔を見て腕の中の青年も笑顔を見せた。
しかしその笑顔も一瞬で消え……。

「……っ慶次ぃぃぃ!!」


最期に見せた笑顔は今までで一番輝いてみえた。








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