愛しき君ともう一度。

夢を見た。遠い昔の夢を。
忘れたいでも忘れてはいけない悲しい過去。
今でもあいつの慟哭が聞こえる。
『私は貴様を許しはしない!!私から絆を奪った貴様を!』

あいつは泣いていたのだろう。
涙を流すことはなかったが、心は泣いていた。
戦国で生を終え、平成の世に再び生を受けた。
この世には朋友がたくさんいる。
もちろん三成も。
あいつは、今もわしを憎んでいる。でもわしは…

「よし。」

前に進まなければならない。
憎しみを断ち切る為に。
悲しみを繰り返さない為に。

携帯を取り、一度も使われなかった番号をコールする。

『なんだ。』

「あ、三成?今日暇だろう?わしと遊ばないか?12時に駅で待ち合わせな!」

『は?おい!家康…貴様何を…』

三成の返事を聞く前に電話を切る。なんだかんだ三成は義理堅い。こうすれば嫌でも駅に来てくれるだろう。

「さて、行くか。」




「一体何処に連れて行く気だ!」

「まぁまぁ、黙ってわしに着いて来てくれ。」

思った通り駅に来てくれた三成を引っ張って行く。

「ここは…。」
連れて来た場所は名古屋城。
わしが戦国の世で居城にした場所。
呆然とする三成を引っ張り天守閣まで登る。

「待て!家康!何故ここに…」

「お前にこの景色を見せたかったんだ。三成。」

目の前に広がるのは名古屋の街。
わしが治めた戦国の世とは全然違う。でも人々の笑顔が溢れる平和な街。

「本来なら戦国の世にお前と見たかった。でもそれは叶わなかったからな。」

「何を勝手なことを!!全ては貴様のせいだ!!」

三成の台詞が、天守閣に響き渡る。苦しそうな表情も悲しみに溢れた声も夢でみたものと変わらない。

「そうだな。わしのせいだ。でもな三成。わしはやり直したいんだ。太閤を手に掛けたことを許せとは言わない。言える立場じゃないのもわかっている。だがもう過去のことだ。今は戦国の世じゃない。わしはお前ともう一度絆を作りたい!」

「貴様は何を…!!いつもそうだ貴様は何もわかっていない!!
私が貴様を憎んでいるのは…
貴様が秀吉様を殺したからだけではない!!貴様が裏切ったからだ!私の信頼を…貴様を愛していた私の心を…!!」

その言葉を聞いた瞬間、堪らなくなって三成の腕を引き強く抱きしめた。
腕の中の愛おしい存在を確かめるように強く。
酷いことをして傷つけた。
嫌われていると思っていた。
だから…。三成の言葉が堪らなく嬉しい。


「すまん。三成。……ありがとう。わしを好きでいてくれて。」

「……離せ。私は貴様のそういう所が嫌いなのだ!全てをわかりきったような態度が!貴様に私の何がわかるというのだ!!」

「ああ、そうだな。わしはお前のことをわかってなどいなかった。わかろうともしてなかったのかもしれない。だから三成。もう一度わしにチャンスをくれ。お前とわかり合いたい。」

「今さら許可など求めるな!!貴様はいつだって自分勝手にやってきただろう!!勝手にすればいい。」

本当に愛おしいと思う。
素直になれない不器用な三成が。
もう間違えない、間違えてはいけない。
今再び紡ぎ始めたこの絆を失わない為にも。

「好きだ。三成。わしと共に生きてくれ。」


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