友達よりも。



彼は優しいから。
この気持ちを伝えたところで困らせるだけだろう。
気持ちは伝えない。だから友人として隣にいることは許して下さい。



「元親ー!!」

教室の外から政宗と楽しそうに話してる元親に声をかける。
声に反応して俺の方に近づいてきた。

「なんだよ、慶次。」

「あのさ、今日の帰り送ってくんない?まつ姉ちゃんに早く帰ってこいって言われてさー。」

「またかよ。しょーがねぇな。いつもの場所で待ってな。」

「流石元親!ありがと!!」

笑顔で承諾してくれた元親に手を振って自分の教室に戻る。
まつ姉ちゃんに早く帰ってこいって言われた。
いつもの台詞。
こういえば元親は優しいからバイクで送ってくれる。
本当は早く帰ってこいなんて言われてない。でも元親と一緒に帰りたくて、人気者の元親を独り占めしたくて。
定期的にいうようになった。

「……ごめんな。」

優しさにつけこんでいる自覚はある。
でもやめられなかった。



放課後。
バイク置き場で元親を待つ。
何度も乗ったから元親のバイクも覚えてる。

「遅いなぁ。」

ホームルームが終わって暫くたつのに元親はまだこない。
いつもならすぐに来るのに。
嫌な予感が胸を過った。

「慶次!!悪りぃ、遅くなった。」

此方に向かって走ってきた元親を見ても胸騒ぎは収まらない。

「ううん、大丈夫。何かあった?」

「あー、告白されてよ。断ったら泣かれちまって。」

困ったように笑う元親。
告白された。そのことに胸が騒ぐが断ったと聞いてほっとした。

「……元親って好きな人いたっけ。」

聞きたくて聞けなかったこと。

「……いる。ずっと好きなんだけどよ…」

「…そ、そうなんだ。告白しないの?」

元親の応えに胸が痛む。さっきの胸騒ぎはこれか。
聞かなきゃよかった。

「あー、なかなかなー。それより帰るぞ。」

濁されたな…。
元親の好きな人を聞き出そうとしたけど早く帰るといったのは俺だ。
頭に乗せられたヘルメットを被りバイクに跨る。

「しっかり捕まってろよ。」

「うん。」

前にいる元親の背中にしがみつく。
その温もりに胸が高鳴るが気になってるのは元親の好きな人のこと。

「…あのさ!」

勇気を振り絞って声をかけるも元親からの返事はない。
バイクの騒音で聞こえないのだろう。

「……好きだよ。元親。」

胸に溢れる想いを口に出してみる。
聞こえないなら口にしたっていいだろう。

「送ってくれてありがとな!」

いつも通り家まで送ってくれた元親に礼をいう。
いつも通り笑えてるだろうか。

「あぁ。これくらい大したことじゃねぇさ。」

「また明日!」

手を振り家に入ろうとしたら腕を強くひかれた。
驚いていると唇に触れる柔らかい感触。
視界いっぱいに広がる元親の顔。
キスされた…。
呆然としてると離れていく元親。

「…え。」

「告白は顔を見て言うもんだぜ。」

その台詞に顔が熱くなる。
聞こえてた……。
恥ずかしくて俯くと頬に手が添えられ上を向かされる。
此方を見つめる元親の顔は自信に溢れていて。
かっこいいなと思ってしまう。

「ほら、もう一回言ってみろ。」

「……好きだよ。元親。ずっと好きだった!!」

その言葉と同時に元親に抱きつく。
受け止めてくれる。そんな気がした。

「うわっ、…俺も好きだぜ。慶次。」

抱きついた俺を受け止めて、好きだと言ってくれた元親。
これからは恋人として隣りに立ちたいと思う。







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