ささやかなプレゼントを君に


誕生日。
一年に一度の特別な日。
生まれてきてくれたことに感謝の気持ちをこめて。

「何を差し上げたら喜んでくれるのだろうな…。」

「伊達ちゃん?なんでもいいんじゃないの。」

「……某は真剣なのだぞ。」

目の前に座る佐助に尋ねるも返ってきた応えは某の望むものではなくて。
眉間に皺がよってしまう。

「そんな怖い顔しないでよー。巫山戯た訳じゃなくてさ。旦那がくれたものならなんでも喜ぶんじゃない?」

「…そうなのか。うむぅ。」

「……お金がないならケーキでも作ったら?」

「おお!!」

何かを買うにしても部活一本でバイトをしてない某にはお金がない。
だがケーキならそんなにお金もかからないだろう。

「佐助!!教えてくれ!!」

「はいはい。任されましたっと。」

佐助は器用だし、料理もお菓子も上手い。佐助に教えてもらえば間違いないだろう。



「……旦那想像以上に不器用だね。」

「すまん……。」

目の前あるのはぺたんこのスポンジ。
これで何個目だろうか。
数えるのは大分前に諦めた。
政宗殿の誕生日はまだ先とはいえ間に合うとは思えない。

「んー、何でこうなるかなぁ…。俺も一緒にやってるのになぁ」

「……すまん。だが…!」

「わかってるって。最後まで付き合いますよ!」

「…かたじけない!!」

付き合わせて申し訳ないがなんとか完成させたい。
気持ちを込めて。


「…よし。」

8月3日。政宗殿の誕生日。
なんとかケーキは形になった。
味も大丈夫。ラッピングも不恰好だかした。
あとは渡すだけ。なのだが。

「伊達くん!これ!」

「おめでとう!これ作ってきたの!」

「はい!プレゼント!」

女の子に囲まれてる政宗殿。
誰もが皆可愛くラッピングされたプレゼントを持っていて。

「Thanks,」

彼はそれを笑顔で受け取って。
胸が痛くなった。
きっと某の作ったケーキは彼女たちの誰にも敵わない。

「……失敗したな。」

最初から既存品にすればよかった。
そうすればこんな気持ちになることもなかっただろう。
ケーキなど上手くつくれないのに。
持っていた袋を握りしめて、そっとその場を去った。
自分が惨めで。もっと違うプレゼントを用意しておけばよかった。
用意したプレゼントはこれだけだから。お祝いすることも出来ない。

「……幸村!」

後ろからかかった声。
振り向くと息を切らした政宗殿。

「何か用があったんじゃねぇのか。」

「何もないでござるよ?」

その質問に胸が痛むが笑顔で誤魔化す。

「……じゃあその袋はなんだ。」

「これは……。」

「俺へのプレゼントだろ?」

見透かされている。
でもこれを渡すわけには…。
政宗殿の顔をみれば眉間に皺をよせて悲しげな顔をしていて。
そうだ。政宗殿を祝いたかったのだ。
周りとか関係ないのに。
その気持ちを忘れていた。

「お誕生日おめでとうございまする。」

「ありがとう。」

持っていた袋を政宗さしだす。
受け取った政宗殿は微笑んでくれて。
頑張ってよかったなと思う。

「あまり大したものではございませんが…。」

「幸村から貰えたらなんでもいい。」

照れながら言う政宗殿に愛しさが募る。

「生まれてきてくれてありがとうございます。」

赤く染まる頬にそっとキスを落とした。
来年も再来年も彼の生まれた日をお祝い出来たらいいと思う。
.


[ 41/45 ]

[*prev] [next#]
[小説一覧]
[しおりを挟む]


[しおり一覧]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -