最期の…
布団に横たわるその肢体にそっと刀を振り下ろした。
息の根を止めるために。
確実に急所を狙って……。
「……っな、んで…」
躱されると思ってた。躱して欲しかった。気配だって消してないのに。
「……っ、くはっ。」
「何で!何で止めなかったの!!起きてただろ!!躱せただろ!?」
思わず声を荒げてしまう。
何故、どうして。
その思いだけが頭をよぎる。
「……っ待て。」
「喋んなって!!誰かっ。」
自分の立場も忘れて人を呼びに行こうとしたら服を引っ張られた。
「…っ何。」
「……側にいてくれ。」
「そんなことより手当て…。」
首を小さく振られた。それが意味するのは拒否。
助からない……。
そうだろう。急所を狙ったのだ。確実に息の根を止めるために。
「……っごめん、ごめん。」
残された時間が少ないことがわかり溢れだす涙。
横たわる彼の顔が涙で滲んで見えなくなる。
どうしてこんなことになってしまったのか。
ただ愛しあっていただけなのに。
「……一つだけ、頼んでいいか、」
「……な、に。」
「……口付けを。」
「…っ。」
その言葉に胸が熱くなる。
思い返せば身体を重ねた事はあっても唇を重ねたことはなかった。
……彼の唇にそっと唇を重ね、その温もりが消える前に自分の喉元に刃を突き刺した。
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