哀しき君。

ずっとこの時を待っていた。
三成と対峙するこの時を。
心が震える。それは恐れか。それとも歓喜か。
これが最期。出来ればもう一度共に歩みたかったが、それは叶いそうにないから。
終わらせる。哀しみの輪廻を今ここで。

「家康…!!貴様を殺す…!!」

「三成…。出来ればお前とは戦いたくはなかったんだかな。」

「私は貴様を許しはしない。私から全てを奪った貴様を…!!」

三成から感じる負の感情。その中に含まれるのは途方ない憎しみ。そして僅かな哀しみ。
わしが三成に遺したのは負の感情だけなのだろうか。
東照と呼ばれながらもたった一人の大切な人を照らすことも出来ない。

「ごめんな…。三成。」

お前の側にいれなくて…。
お前と同じ道を歩めなくて…。
お前を憎しみの中に落としてごめん。
三成への懺悔はそっと風に掻き消された。三成に届いてはいないだろう。それでいい。
赦しをこう資格などわしにはない。

「行くぞ、三成…!!」

拳を握り三成の元へと駆け出そうとしたその時。

「久しぶりだな。東照。そして新たな宝を生み出す者よ。」

突如爆音が鳴り響き、辺りが白煙に包まれた。
白煙の中から聞こえる声と近づく影。

「お前は…!松永久秀!!どうしてお前がここに…。」

「平蜘蛛の代わりを探しにね…。」

「誰だ。貴様は。私の邪魔をするな…!!」

白煙の中、うっすらと三成に向けて振り下ろされる松永の刃が見えた。

「…三成!」

二人の間にわって入り刃を手の甲で受け止める。

「ほう。やはり卿らは面白いな。
卿の奏でる唄は実に面白い。」

「儂の唄…?何を言って…。」

微笑みながらそう語る松永には底知れぬ恐怖を感じる。

「東照の唄はこの場にて完結する。新たな宝を作るのは君だ。凶王。」

「宝だと…。貴様は何を言っている!!」

「どういう……っぐぁ。」

突如此方に手を伸ばしてきた松永。払いのけようとするが僅かに間に合わず首を掴まれた。
そのまま上に持ち上げられ、首が締まり息が出来なくなっていく。
あぁ、もう駄目だ。
松永は確実に命を奪いにきている。
色々な人の顔が頭をよぎる。
すまない……。約束は守れないようだ。
もしも来世があるならば、その時はお前と隣を歩きたいな。
三成……。

「…っく、……つ。みつ……な…り……、」

「凶王…。卿からは……絆を貰おう。」

「やめろぉぉ。家康を殺すのは、私だぁぁぁぁ!!」


三成のその台詞を最後に視界が赤く染まり、意識がなくなった。





..


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