I love you




「今日でお別れにございます。もう此方には参りませぬ。」


「あぁ。」


いつか言われると思っていた。
幸村が言わなければ自分が言っていただろう。
戦国の世で敵国の二人がずっと一緒にいられる訳がない。
幸村が武田の大将となったのならなおのこと。

「……武田は西軍として関ヶ原に参戦いたしまする。政宗殿とは……。」

「……次に会った時は敵同士だな。」

今までだって俺と幸村はライバルだった。それは真剣勝負といいながら手合わせの様な物だった。でも今回は違う。
国を背負って幸村と戦わなければいけない。
どちらが死に、どちらが生きる。
そういう命を懸けた戦いをしなければならない。
わかっていたはずなのに、どうしようもないくらい胸が苦しい。
あぁでもこの命が尽きる最期の瞬間に幸村を見ることが出来たらそれはどれほど素敵なことだろう。
この命を奪うのは幸村であって欲しいし、幸村の命を奪うのは俺でありたい。

「幸村…。I love you。」

「……某には南蛮の言葉はわかりませぬ。」

いつも別れの時に言っている言葉。愛してるというのは照れ臭かったから幸村がわからないのをいいことに南蛮語で言い続けた。
あぁでも最後くらいは言ってもいいかもしれない。


「あ「あいらぶゆー。でございます。政宗殿。」…え。」

幸村が言ったその言葉は先程俺が投げた言葉で。
どうして。南蛮語などわからないはずなのに。現に幸村はわからないと言っていた。

「南蛮語が理解出来なくとも、あんなにも愛おしそうに見つめられれば意味くらいはわかりまする。」

「そうか……。愛してる。」

「某も…。愛しております。」


愛してるという言葉がこんなにも
暖かくて、哀しい響きをもっていることをはじめて知った。
もう二度とこの響きを聴くことはないのだろう。










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