愛合傘。
薄暗い空から雨が降りしきる。
天気予報は晴れで、朝から雨が降りそうな気配はなかった。
にもかかわらず、夕方に突然雨が降り出した。
通り雨かと思い雨宿りして待ってはみたが、止みそうない。
「はぁ…。走るしかないか。」
これ以上待った所で止む保証はない。それならば走って帰えるしかない。身体は濡れるだろうがこの際致し方ない。
「よしっ!」
「家康っっ!!」
気合いを入れて走り出そうとしたその時後ろから声がかかった。
振り向けばそこにいたのは息を切らした三成。
「……三成?」
「何をしている。風邪を引きたいのか。」
「…迎えに来てくれたのか?」
「……ついでだ。」
そう言い俯いた三成の頬は赤らんでいて照れているのがわかる。
三成らしい不器用な優しさについ顔が綻んでしまう。
「ありがとう。三成。」
「ふんっ。帰るぞ。」
三成が右手に持っていた傘を差し出される。
「おい…?」
その傘を受け取らずにいたら三成が訝し気に声をかけてくる。
それに応えずに三成が今までさしていた傘を奪いとる。
「っおい!」
「さて。帰るか。」
その傘を三成に傾け歩き出す。
相合傘。と呼ばれるそれは、大の男二人がするには不似合いで。でも左側に三成の温もりを感じることが出来る。
そんな些細なことがどうしようもなく幸せだと思う。
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