願わくは君と。
嘘だと思った。
嘘であって欲しかった。
唯一無二の腹心から告げられた言葉は余りにも信じ難く…
いや、信じたくなかった。
「報告します。伊達軍が小田原にて石田軍と交戦。伊達軍は負け、独眼竜は討死したものと思われます。」
あぁ、どうして…。
たくさんの約束をした。
この戦乱の世で全てが叶えられるとは思っていなかった。
叶えられる約束など一握りほど。
……それでも某は信じていたのだ。
貴方との約束が叶う日がくることを。
貴方の隣で笑い合える日がくることを。
「そうか。わかった。」
「武田はこれからどうしますか。」
この戦乱の世は残酷だ。
愛する人を喪った哀しみに浸る時間すら与えてはくれない。
「武田は……石田軍と同盟を結ぶ!!」
「いいのか。大将。石田と同盟を結べば…。」
佐助が言いたいことはわかっていた。
石田と同盟を結べば、石田を討つことは出来ない。
それは即ちあの方の仇をとれないと云う事。
それでも…。
「いいも悪いもそれしかなかろう。武田が生き残るにはそれしか…!!」
某は武田の総大将だ。
甲斐の民を護ることを最優先しなければならない。
自分の感情など二の次だ。
あぁ、それでも…。
願わくは貴方と共に有りたかった。
貴方と共に生きる事が許されないのなら、
貴方と共に死にたかった。
貴方の六爪で殺して欲しかった。
……それはもう叶わない。
だからどうか一つだけ。
もし生まれ変わったら貴方と共に生きたい。
そう想うことだけなら自由であろう?
「政宗殿…。」
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