密かな逢瀬。

一体いつぶりだろうか。
戦の準備で全国を飛び回っていたから此方には足を向けることが出来なかった。
会いたい。奥州に近付くにつれその気持ちがどんどん強くなる。
辿りついた青葉城。小十郎さんの自室。太陽は随分前に沈んだし、普通の人なら寝てる時間。
でも小十郎さんは起きている。そんな自信があった。
音を立てないようにそっと天井裏に入る。
表から入るのはなんとなく気まずい。

「これも忍びの性ってやつかねぇ。」

恋人の城とはいえ、敵国は敵国。
気を抜くことは出来ない。

「降りて来い。佐助。」

「ほいよっと。いつものことながらよく気がつくよねー。」

呼びかけに応え天井裏から部屋に降りる。
どれだけ気配を消しても小十郎さんには絶対に気付かれてしまう。
忍びとしてどうなんだと思わなくないけど、恋人に気付いてもらえるのは嬉しいものだ。

「久しぶりだな。元気だったか。」

「もちろん!って言いたいけどさ…」

そっと小十郎さんに近寄り抱きつく。その瞬間に腕を背中に回し抱きつき返してくれる。

「色々あって疲れたんだ。癒してよ。」

「そうか…。怪我はないのか。」

「うん…。たださ真田の大将支えるために動き回ったからねー。」

お館様が倒れて武田の大将になった真田の旦那。
大将の重責に潰されそうな大将を支えるために各国の情報を集め同盟の交渉に出向きここ暫くはゆっくり休む暇などなかった。
忍の仕事だから文句は言わずきっちりやり遂げる。
…でも恋人の前くらい弱音を吐いたって咎められないだろう。

「いつまでいれる。」

「明日の朝には上田に戻るよ。」

「…なら今夜はゆっくり休め。」

小十郎さんと一緒に布団に横になる。
武田の副将でもなく、真田十勇士の長でもなく、ただの猿飛佐助になれるこの瞬間が堪らなく好きで。
この時間がずっと続けばいいと思う。
そのために…。

「早く天下とってよ…。旦那。」

この戦国の世が早く終わることを願う。











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