身も心も全て。
それは偶然だった。
屈んだ瞬間に見えてしまった小十郎さんの首筋。
そこにある赤い鬱血。それは所詮キスマークと呼ばれるもので…。
俺様と会うのは一週間ぶり。
つまり…。
「…浮気?」
「あ?」
俺の声に反応した小十郎さんがこちらに顔を向けるがそれどころではない。
なんで。いつ。誰と。
そんな思いが駆け巡る。
小十郎さんは、俺のものなのに…!!
「おい。佐助?どうし…っ」
胸の内にある怒りをぶつけるように、小十郎さんを壁に押し付ける。
「ねぇ。何これ。」
思ったより低い声が出た。怒りがそのまま声に出ている。小十郎さんも気付いただろう。
でも止めることは出来ない。
小十郎さんの言葉も頭に入ってこない。
「誰。誰とやったの。」
「おい。」
「浮気は許さないって俺様言ったよね?まぁいいや。その女みつけてぶっとば…っ、ん…ふっ。」
問いただしていた言葉は、小十郎さんにキスされたことによって遮られた。
「ちっとは落ち着きやがれ。」
「落ちつけるわけないじゃん!!ちゃんと説明して!!何なのそのキスマーク!?」
再び質問をぶつけると小十郎さんの眉間に皺がよる。
苛ついているのがわかったけど落ちつけるわけなかった。
久しぶりにあった恋人にキスマークがつけられていて冷静でいられるわけがない。
「誰!?」
「はぁ。政宗様だ。」
「…伊達ちゃん?」
「あぁ。昨日は会社の飲み会でな。政宗様も相当呑んでおられてな…。」
「成る程…。」
小十郎さんの上司であり、俺様の友達でもある伊達ちゃんはお酒に弱い。酔うと周りの人間に絡みまくるタイプだ。いつもはうちの旦那がストッパーだけど、会社の飲み会ではそうもいかない。
「……悪かったな。」
「何が。」
「不安にさせた。ここ最近忙しくて連絡も出来なかったからな。…それでも覚えていろ。俺が好きなのはお前だけだ。」
その言葉に胸が暖かくなる。
俺もだよ。と返そうとして、再び目に入ったキスマーク。
小十郎さんの身体にある自分以外の誰かがつけた証。
それがどうしても許せなかった。
「佐助?…っ!」
キスマークを隠すように小十郎さんの首筋にかぶりつく。
血がでないように、でも跡はしっかり残して口を外した。
「小十郎さんは俺様のものだから。」
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