月が綺麗ですね。
翔さん相互記念。
お持ち帰りは翔さんのみ。
窓の外を見上げる。
今日は満月だ。雲一つない夜空に煌々と輝く満月。
その光を見ていると自分が世界に一人になった気になる。
「……三成?」
名前を呼ばれ振り返れば此方を不安そうに見つめる家康がいた。
「何故そんな顔をしてるのだ、家康。」
いつも笑顔を絶やさない家康には珍しい。いつだって家康は自信に溢れているというのに。
「…いや、三成が消えてしまうような気がしたんだ。」
「何を馬鹿な事を言っているんだ。」
「馬鹿な事……そうだな。でも月の光にのまれてしまいそうだったんだ。」
珍しいなと思う。家康が不安を露わにするのは。
でも嬉しくも思う。この男が不安を見せるのは私の前だけだ。
家康を泣かすことの出来るのも私だけだ。
この胸にあるのは途方もない独占欲。
かつて東照と呼ばれ皆の光だったこの男は今は私だけのものだ。
「それなら私を抱きしめろ。」
「え…?」
「私を抱きしめて寝れば消えるなどという不安にかられることもないだろう。」
恐る恐る此方に近付いてきた家康と共にベットに入る。
優しく包み込む腕にどうしようもない愛おしさを感じる。
不思議なものだ。
前世ではあれほどこの男を憎んだというのに。
ああ、でもあの前世がなければ今の私はいないのかもしれない。
そう思うと憎しみに溢れてたあの日々も愛おしい。
「……家康。」
「なんだ?」
「月が綺麗だな。」
「あぁ。そうだな。」
生まれ変わり再びお前と巡り逢えたこの奇跡を大切にしよう。
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