「なまえちゃん大丈夫やろか」
「熱あんのに体育なんてするからや。ぶっ倒れるまで気付かんとか絶対アホやろ」
「アホはお前や一氏ィ!!なまえちゃんを馬鹿にすんのは許さんで!」
「こ、こはる…」

二時間目と三時間目の休み時間、たまたま廊下を通ったときテニス部のお笑いペアである小春と一氏の会話が聞こえた。……なまえ?熱?倒れる?まさか。

「ちょおその話詳しく聞かせてや」
「蔵リン、急に出てこんといてや。びっくりするやないの」
「すまんな」
「白石!俺と小春の二人の時間を、」
「なまえちゃんな、体育ん時倒れてん。熱あったらしいわ」
「ほんまか!?」
「おん。今は保健室で寝てるはずよ」

それを聞いて俺は走った。後ろで小春の「愛やなあ」なんて声が聞こえた気がした。






保健室の中に声をかければなまえちゃんのかすれた返事が聞こえる。中に入って(保険医は居なかった。そういえば出張だったか)カーテンを開けていいか問えば拒否された。まあ俺を気遣ってくれたわけで、嫌な思いはない。カーテンの近くまで椅子を引き寄せそこに座る。

「そういや白石くんなんでここに居んの?授業は?」
「もう昼休みですよ、お嬢さん」

嘘をついた。ほんとは三時間目の最中。けどなまえちゃんを安心させるためには仕方ない。目が覚めたと言う彼女に苦笑しつつ、俺はテニス部の話をすることにした。馬鹿馬鹿しい話一つひとつに反応を示してくれて、とても話しがいがある。

「でな、……なまえちゃん?」

返事の代わりに小さな寝息が聞こえた。カーテンを開け、眠る彼女の頭を撫でる。少し残念だったが、安らかな寝顔を見てなんだか心が暖かくなった。




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