「すんませーん。切ってしもたんスけど」
「あ、そこ座って。ってすんごい血ぃでてるやん!!」
「彫刻刀でさくっと」
「そんな軽いもんとちゃうやろ!」

だらだらと流れている血を拭き取り、消毒する。出血のわりに傷はそこまで深くて安堵。絆創膏を貼れば「どーも」とお礼を言われた。

「えーと、学年とクラス、名前教えてくれへん?」
「一年四組財前光」
「あ、財前くんってテニス部?」
「そうですけど。なんで知ってはるんですか?」
「白石くんからよう聞くねん」
「あ、もしかしてえーと…なまえ先輩、スか?」

財前くんから私の名前が出たことにもビックリだったけど、私を知ってる理由にも驚いた。

「白石部長から何度も聞いたことあるんですわ」
「そ、そうなんや」
「それはもう鬱陶しいぐらいに……げ、」

私の後ろを見て声を漏らした財前くん。後ろには窓しかないんだけど、

「財前!!」
「やば、ほななまえ先輩さいなら」

財前くんは白石くんの姿を見た途端逃げるように保健室から出ていった。残ったのは私と、窓の桟に足をかけている白石くん。体育をやっていたのか、体操服のままだった。

「白石くん…?どないしたん」
「あ、や、なんでもないで!俺着替えてくるわ!!」
「?おん」

着替えたら行くし!と言って走って行った白石くんは三分で着替えを済まして保健室にやってきました。




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