廊下を歩いていたら誰かに呼ばれた。振り返れば保健の先生がこちらに向かってきていた。小さく首を傾げる。俺、なにかしたっけ?

「ねえ、白石くん、もしよかったら―――……」

俺は先生の言葉に何度も頷いた。






やばいやばい、時間がない。書いた日誌を担任に渡したら雑用までやらされてしまった。しかもその量が半端じゃない。俺は階段を駆け降りた、汗が流れる。

……着いた…、一呼吸おいて「保健室」というプレートがついている目の前のドアを開けた。

「すんません。遅れてしまいました」
「し、白石くん!?」

小さく頭を下げればどこからか聞こえたなまえちゃんの声。室内を見渡せば保健の先生にバインダーで叩かれている彼女が目に入った。空席だったなまえちゃんの横の椅子に座ると小声で話しかけてきてくれた。

「なんで白石くんが?」
「なまえちゃん今年も保健委員かなー思て。一緒がよかってん」
「わ、私も一緒で嬉しい」

ああ、なんて可愛いんだ。気が付いたときには自分の気持ちが漏れていた。

「なまえちゃん、好きや」
「え、ええええええええ!?」

俺の告白に頬を染め大きな目をこれでもかと見開いて大声をあげたなまえちゃん。は、また先生にバインダーで叩かれた。周りに笑いが広まったけどそんなことはどうでもいいんだ。

「なまえちゃんは?」
「わ、私も好きやっ!」

その言葉に嬉しくなってつい小さな彼女を抱き締めてしまった。ぎこちなく回してくれる腕までもが愛しい。拍手に気が付いたのかなまえちゃんはバッと顔をあげた。

「こっここ、ここここ!!」
「鶏かいな」
「ちゃ、ちゃう!ここ保健室やん…!」

保健室は再び笑いに包まれる。ちらり、と先生に視線をやればにんまり笑いながら親指を立てた拳を突き出していた。




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