そしてそんなことがあってから一週間後。部活中、白石に声をかけられた。

「なん?」
「二、三日前からやねんけどあそこにいる女の子ずっと謙也のこと見てんで」

白石の指が示す方向に目を向けるとこの前の女の子が隠れながらこちらを見ていた。ばち、と視線が搗ち合う。するとあの時のように女の子は顔を赤くして走り去ってしまった。一体どないしたんやろか…。首を傾げる俺の横で白石が「ついに謙也にも春が!んんーっ、エクスタシー!」なんて叫び出す。それを聞いた生意気な後輩が鼻で笑ってきた。かちん。

「財前お前かて彼女おったことないやないか!」
「うっさいっすわ」
「ちょ、いた!人に向かって打つんやめや!いだっ!」

図星を突かれて不貞腐れた財前が俺めがけてサーブを打ち込んでくる。必死にそれを避けていると「光なにしとるん?ワイも混ぜてやー!!」なんて言いながら金ちゃんがラケットを構えた。あかん、金ちゃんはあかん!死んでまう!!ええで、ぶちかませ金太郎。笑顔で囁く財前に顔が引き攣る。

「こら、そこまでにしとき」
「ちっ」
「舌打ちするんやない」
「えー!なんでなん光ばっかズルいわ!!」
「ま、しゃーないっすわ」

金ちゃんがキャンキャン吠える度に白石の顔から笑顔が消えて行く。しかし白石に背を向けているゴンタクレは気づく気配がない。何時の間にか隣にいた千歳が「八秒。白石が金ちゃんを追いかけ始めるまでの時間ばい」なんて呟いた。才気をこないなところで使うなっちゅー話や。

「金太郎、死にたいん?」
「ど、毒手いやや〜!!堪忍してえな!!」

脱兎のごとく逃げ出すと銀の後ろに隠れた金ちゃんに千歳はドヤ顔でこちらを見てくる。それを適当に流しながら千歳を引き連れて、手招きするラブルスに駆け寄った。

「お二人さ〜ん!ワテと愛を育みましょ!」

んちゅっ!と投げキッスを飛ばす小春。ユウジは驚愕の面持ちでそれを見ていたかと思えば、お決まりのセリフを叫びながら飛び跳ねると小春が放ったものを捉えるかのように宙をぱくりと食べた。目を瞑ってゆっくりと咀嚼している。ごくり、と大仰に飲み込む動作をしたあとユウジが口を開いた。

「小春の投げキッスは俺のモンや!誰にも渡さへんで!な、こはるぅ〜」
「ベタベタしなや一氏ィ!アホなことしてんとさっさとコート入らんかい!!」


声を荒げる小春を小石川が宥めに近づくと彼の態度はコロッと変わり、猫なで声で名前を呼びながら腕に纏わりつき始めた。それを必死に剥がそうとするユウジと小石川。なんでもええからはよせえや!



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