最近の俺の悩み、それはモテないこと。いや別にちやほやされたいってわけじゃない…うん、ちがう。けどほら中学生やし?やっぱモテたいやん?小学校のときはモテていた。バレンタインだって侑士よりチョコ多く貰ってたし!変わったのは中学に上がってから。まあその原因はハッキリしている。目の前に座る俺の親友だ。

「なんやねん、謙也。俺そろそろ穴開くで」
「開くわけないやろ!」
「わかった、俺に見惚れてたんやな!男の謙也まで誘惑してまうなんて…んーっエクスタシー!」

ガタッと席を立ち上がってポーズを決める白石に女子からの黄色い声が上がる。…なんでや。絶対おかしい。学校だけならまだしもあの口癖街ん中でも言うねんで!?逮捕もんやろ!恋は盲目とはいうけど…。はあ、と深いため息を吐いた。

今まで可愛いと思った子はみんな白石のことを好きになった。俺に近づいて来る子はみんな白石と仲良くなりたいだけだった。一度勇気を振り絞って告白したら「ごめん。謙也はうちにとっていい友達で相談役やねん」とフラれた。それがきっかけでしばらく疎遠になり、久しぶりに話しかけられたと思ったら頬を赤くして「白石くんて好きな子おるん?」その言葉に一気に気持ちが冷めた。いろいろ思い出して頭がパンクしそうだ。机に突っ伏して思考をシャットダウンした。






昼休み、なんとなく屋上に行きたくなり(まあ教室に居たくなかったというのが本音)階段を上っていた。一段、二段、三段と数えていたら急に目の前に影が落ち、それと同時に叫び声。え?と思って顔を上げると女の子のドアップ。

「きゃああああああ!!」
「!?」

咄嗟に手を出して受け止め、抱き合う形になった。バクバクと鳴る心臓を必死に落ち着けてから「大丈夫?」と声をかける。

「すすすすいません!助けてくれてありがとうございます!」
「お、おん、無事でよかったわ」

俺から離れるとすごい勢いで頭を下げてきた。その勢いに戸惑って吃る。そして今度は勢いよく顔を上げ、ペタペタと手で顔を触り出した。不思議に思って俺は首を傾げる。忙しい子やなあ。

「め、眼鏡がない…!」
「え」
「私ド近眼で全く見えないんです…。助けてもらった上に申し訳ないんですけど、一緒に探してもらえませんか…?」

泣きそうな顔で頼まれて冷たい言葉をかけるなんてことはしない。いや、もちろん泣きそうやなくても手伝うけど。ええよ、と言えば笑顔でお礼を言われた。…かわいい、かも。辺りを見回せば目的の物はすぐに見つかった。床に投げ出されているそれを拾ってまだ探している彼女に声をかける。

「これちゃう?」
「……あ!これです、ありがとうございます!」

俺の手にあった眼鏡を眉を顰めながらじっと見つめ、確かめていたのを見て本当に目が悪いんだなあ、なんて思う。女の子は眼鏡をかけ俺を凝視すると、途端にその顔は真っ赤に染まっていった。

「う、あ、ごめんなさいいいいい!」
「え!?ちょ、」

いきなり叫び出し、ダッシュで去る彼女に反応できず呆然と後ろ姿を見送ることしか出来なかった。伸ばした右手をそっと下ろす。そういえば名前、と思ったが仲良くなったってどうせ…。落ち込む俺を無視して鐘の音が響いた。



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