目の前の満面の笑みで喋るこいつを誰か黙らせて。人の気も知らないで…。

「あいつマジでかわいいんだぜ!顔真っ赤にしてよー」
「そうなんだ」
「今度の日曜に映画行くんだ!」
「よかったね」

相手の子が悪いわけじゃない。赤也が悪いわけじゃない。醜い私が悪いの。二人の幸せを、赤也の笑顔を壊したくはない。

「でさ、緊張するから出来たらなまえにも着いてきてほしいんだけど」
「……」
「お前も誰か誘って、」
「っ悪いけど!用事あるから無理。あ、もうこんな時間じゃん、帰るね」

赤也の言葉を遮り早口に言った。「わかった、じゃあなー!」と言う彼の声を背に急いで教室を出る。

階段で赤也の彼女と擦れ違った。笑顔で駆け上がって行く彼女を見て足が止まる。足元に滴が落ちた。

貴方たちの無邪気な笑顔は私にとっての毒だ。




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