「恋やろ」
「は!?んなわけないやん!」
「その割には顔赤いけどなあ」
「白石が変なこと言うからや!!」

ここ数日我が三年二組の教室の隅、基白石くんの席で上のような会話が繰り返されている。声を張り上げてるのは浪速のスピードスターこと忍足謙也くん。話の内容はどうやら忍足くんの恋愛についてのよう(あれだけ大きな声なんだから嫌でもわかってしまう)。私は席を立つ。向かうは教室の隅、彼等のもとに。

「お、なまえちゃんやん」
「こんにちは」
「ははー、こんにちは」
「は、みょうじ!?なんで、」
「いや、ちょっと白石く……蔵に渡しものが」
「なん?」

態とらしく変えた呼び名の意図に気付いたのか白石くんはにやにやと笑う。困惑気味の忍足くんを無視して白石くんに手紙を渡した。まあ白紙だから紙、の方が正しいのかな。それを見た忍足くんは泣きそうに顔を歪ませた。

「っ俺席戻るわ…!」
「また後でね、謙也くん?」
「!?」

下げていた顔を勢いよく上げた彼の顔は真っ赤だった。それは私のせいでもあるだろうけど、さっき渡した白紙の手紙をひらひらと見せ付けている白石くんも入っているはずだ。謙也くんはダッシュで(さすが浪速のスピードスター、速い)席に戻って行った。

「確信犯やろ」
「さあ、なんのこと?」

白石くんの疑問系でない問いには適当に返しておいた。もっとも彼は気づいてるだろうけどね。




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