「いらっしゃいませ〜!美味しいたこ焼きあるでー!安い!美味い!早い!の三拍子揃ったたこ焼きやで〜!」

今日も今日とて自営のたこ焼き屋を繁盛させるために声を張り上げる。お父さんがたこ焼きを焼いてお母さんがその手助け。娘の私は雑用と宣伝係で、一応看板娘でもある。「お、なまえちゃん今日も精が出んなあ!」なんて声をかけてくる近所のおじさんたちを店の中に押し込んだ。ちなみに売り上げは上々。この辺りでは割と有名だったりする。さて、もう一踏ん張りだ!と思って息を吸い込んで声を張り上げようとしたとき、

ぐぅうううぅううううぅうううう

……なに!?今の音なに!?びっくりして周りを見回すとうちの店から少し離れた場所で倒れている人。え、なに!?生きてるよね!?

「ちょ、大丈夫ですか!?」
「は、はらへったあ〜…」

慌てて声をかけると少し顔を上げてそれだけ言って再びパタリとうつ伏せてしまった。もしかしてさっきの…お腹の音?高い声と背丈から男の子には見えなかったが、筋肉質な体は男子特有のもので。見た目と反して結構な体重の彼を引きずりながら店に連れて行く。両親に状況を説明したところ、すぐに水と出来たてホヤホヤのたこ焼きを用意してくれた。その匂いからか男の子はパチッと目を覚ますと涎を垂らしながら「いっただっきまーす!!」と言って丸ごと一つ口に含んだ。もう一度言う、たこ焼きは出来たてホヤホヤである。

「〜〜っ!」

声にならない声を出し、涙目になる彼。急いで水を差し出せば一気に飲み干してしまった。荒い息を落ち着かせて次はふーっと息をかけてからゆっくりと口に運ぶ。ほふほふしながら食べている姿は何とも愛らしい。食べ終えた男の子は目を輝かせながら「ワイが今まで食べたたこ焼きん中で一番ウマい!」と声をあげた。その言葉に気を良くしたお父さんは今日はの代金を断った。最も彼が三十八円しか持っていなかったのも理由の一つだが。

「あ、ワイ四天宝寺中の遠山金太郎言います!よろしゅう!」
「えっと四天宝寺高二年、みょうじなまえです。よろしくね」
「なまえ姉ちゃんやな!今日はほんまおおきに!また来るわ〜!!」

店の前で自己紹介をし、手を振りながら走り去って行く遠山くんを見送った。そろそろ中に入ろうと思って踵を返したら先ほど別れたはずの遠山くんに名前を呼ばれ、驚いて振り返る。

「せやなまえ姉ちゃん!ここどこ!?」

迷子だったの!?思わず笑いながら四天宝寺中の裏やで、と答えれば遠山くんは目を見開いた。

「こない近くにウマいたこ焼き屋あったなんて知らんかった〜!」

悔しそうに口を尖らす彼を宥めながら、時間も時間なので帰るよう促した。すると大人しく従い、手を振りながら「絶対また来るしなー!」と言って再び走り出す。また会えたらええなあ、なんて思ったり。




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