寝苦しさと耳障りな音に重い瞼を開く。…なんで雅治がいるわけ?寝苦しかったのはこいつのせいか。ため息を吐いて体に巻きつく腕を外し、来客を知らせるインターホンをしつこいほど鳴らしている人物を確認すべく玄関の扉を開けた。がっつりメイクされた目を丸くした女の子と目が合う。うわあ、面倒くさそうな展開…。彼女は数秒固まったあとギャンギャン騒ぎ始めた。

「ちょっとあんた誰!!なんでここにいるわけ!?」
「なんでって言われても…」
「マサの部屋で何してるわけ!?」
「いやいや、ここ私の部屋だし」
「は?そんな嘘通じるわけないでしょ!表札だって仁王じゃない!」
「そりゃ私雅治の姉だもん」

私の言葉を聞いて絶句している雅治のカノジョであろう女の子を眺めていると、奥から寝惚け眼の弟が欠伸をしながら出てきた。朝っぱらから騒がしいのう、って誰のせいだと思ってんだ。

「あ、マサおはよう!あのね今日のデート、」
「誰じゃお前さん」
「え」

うわあ、雅治さいてー。女の敵だわコイツ。

「一回ヤったぐらいで彼女面とかウザいんじゃけど。朝っぱらから押し掛けて来よってからに。さっさと消えんしゃい」
「そ、そんな…うそ、だよね…?」
「俺は今からなまえちゃんとイチャイチャするんじゃ。邪魔」
「おいコラ抱きつくな」

後ろから首回りに腕を絡めてきた雅治を窘めるも、奴はそれに反発するかのように腕の力を強めた。こんなとこ近所の人に見られたらどうしてくれるの。というかこの子言い触らさないよね?そんなことされたら私ここにいられないんだけど、恥ずかしくて。わなわなと震えていた目の前の子は「シスコン野郎!」と雅治を嬲ると走り去って行った。

「シスコン野郎だってさ」
「別に本当のこと言われても何とも思わん。寒いし部屋入ろ」

雅治は私をリビングまで引きずると自分は逸早くこたつに潜り込み、テレビを付けながら「なまえちゃんこたつのスイッチつけてー」なんて言っている。呆れながら言う通りにして私もこたつに入った。

「えー。なんでそっち?」
「一つの辺に二人も入ったら狭いでしょ」
「嫌じゃ。こっち来て?」
「無理」
「じゃあ俺が行く!」

言うが早いか雅治は私の横に体を滑り込ませてきた。うげえ、狭い!抜け出そうとしたが腰に抱きつかれてしまったせいでそれも不可能となる。諦めてそのままでいると、気を良くしたのか雅治は擦り寄ってきた。ため息を吐いて気になっていたことを問う。

「ところでなんでここにいるの?家は?」
「なまえちゃんに会いたくなったから来てみた。てへ」
「可愛くないから。で、さっきの子はなんで私の部屋を知ってるわけ」
「あー、えー。てへ」
「あんたまた連れ込んだわね…」

はあ、と息を深く吐いて頭を押さえれば腰の締め付けがきつくなった。雅治の瞳が揺らいでいる。すまん、もうせんから嫌わんで。消え入りそうな声でそう呟くと私の胸に顔を埋めた。本当、馬鹿。

「全く…。嫌わないわよ」
「ほんまに?」
「うん。だけど次から来るときはちゃんと連絡して。あと勝手に人呼ばない。わかった?」
「わかった。なまえちゃん大好きじゃ!」

笑顔で抱き締めてくる雅治。私も甘いなあ、と思いつつフワフワの銀髪を撫でた。雅治はシスコンだけど私も相当なブラコンだわ。



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121204 仁王おめでとう!





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