目が覚めて携帯を見れば新着メールが十八件、着歴が二十三件。全て同じ相手、一週間前に付き合った男からだった。げんなりしながら一番新しいメールを開いた。受信したのは二分前。『何かあったの?』内容にハテナを浮かべつつ他のメールも見ることにした。『まだ来れないわけ?』『もしかして携帯見てないのかな?』『早く来てよー』『まさか事故とか?』『今日デートだよ。覚えてる?』は?デート?そんな約束したっけ。記憶を辿ったものの覚えがない。そうこうしている内にも携帯は新たなメールを受信した。送信者の欄に表示されているのは変わらずカレシの名前で。面倒臭くなったので受信拒否する。静かになった携帯を放置して洗面所に向かった。

「うわ、酷い顔。浮腫んでるし。昨日呑み過ぎたかな」

ため息を吐いて諸々を済ませたあと朝食をとり、のんびりと紅茶を飲む。携帯を触ろうとして放置していたことを思い出し携帯を取りに行った。手にとったそれを開いて愕然とする。新着メール三十六件、着信二十七件。さっきより増えてるんだけど。ていうかなんでメールまで?不思議に思って受信ボックスを開けば、英数字の羅列。内容はさっきのものとは別に『なんでアド変したの?』が加わっていた。…うわあ、アド変してまでメールしてくるとかマジでキモイんだけど。未だメールと着信を伝えながらピロピロと音を鳴らす携帯に苛立ちながら、相手を着信拒否にして今度は自分がアド変することにした。面倒だけどまあいいや。やっと本当に静かになった携帯に息を漏らす。ツイッターを開いて友人の呟きを一通りチェックしてから昨日録画したドラマを見るべくテレビを付けた。

クライマックスに向けて盛り上がりを見せているというなんとも腹の立つタイミングで携帯が着信を知らす。誰だよ、空気読めない奴だな。心の中で悪態をつきながら電話に出た。

『お前なんでアド変してんだよ!』
「あれ、ブン太?ごっめーん。カレシ?からのメールがうざくてね」
『なんで疑問系。また変な奴引いたわけ?』
「それがさあ、聞いてよー」
『あー、わかったわかった。話聞いてやるからとりあえず俺ん家来いよ。ケーキ焼いたから』
「わーい!ブン太ちょう好き!」
『そのメール送ろうと思ったのに誰かがアド変するから』
「ごめんって!今から行くね」
『おー』

停止ボタンを押してテレビを消した。ラストが気になるところだったが今となってはどうでもいい。一人でドラマを見ているより、ブン太と一緒にさっきのキモい男の話をネタにケーキを食べる方が何倍も楽しい。やっぱり私、今は彼氏なんていらないや。まだ若いんだから遊んで騒いでしなきゃね。用意をするためにソファから腰を上げた。




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